外部管理者方式(第三者管理)の仕組みと注意点
区分所有法第25条は、管理者を規約に別段の定めがない限り集会(総会)の決議で選び、また解任すると定めています。標準管理規約(単棟型)は理事会で選んだ理事長を管理者とする形をとっていますが(第38条第2項)、管理者を区分所有者以外の人や会社にすることもできます。国土交通省の「マンションにおける外部管理者方式等に関するガイドライン」は、マンション管理士などの外部専門家や管理会社(マンション管理業者)といった区分所有者以外の者が管理者になる方式を「外部管理者方式」と呼び、管理業者が管理者になる場合を特に「管理業者管理者方式」と呼んでいます。平成29年6月の外部専門家の活用ガイドラインを令和6年6月に改訂して今の名前にし、令和7年の法改正を受けて令和8年4月にも改訂しています。どの方式でも、管理の主体は区分所有者で構成される管理組合であることを前提にしています。
標準管理規約のコメント(全般関係③)と別添1は、外部専門家が運営に関わる型を三つに分けています。一つめは理事会を残し、理事や監事、理事長に専門家を選ぶ型で、これは「役員の選任・資格と外部専門家」の記事で扱いました。二つめの外部管理者・理事会監督型は、専門家を管理者に選び、理事会は監事のような立場で管理者を見張る型です。別添1は、大規模な新築マンションなどを中心に想定しています。三つめの外部管理者・総会監督型は理事会を置かず、区分所有者から選んだ監事と、区分所有者全員で構成する総会が管理者を見張る型で、監査法人などによる外部監査も義務づけます。こちらは規模の小さいマンションや、理事長のなり手がいない例外的な場合を想定しています。標準管理規約の条文は理事会中心の運営を前提にしていて、二つめと三つめの型の規約の整え方は別添1に考え方があるだけです。また、管理業者が管理者になる方式は標準管理規約の想定外とされ、留意点はガイドライン第3章を参照するよう書かれています。
別添1が挙げる規約の整え方の主なものは次のとおりです。理事長を管理者とする規定をやめ、理事長と管理者の業務と権限を整理します(理事会を置かない型では、理事長と理事会の業務と権限を管理者に移します)。管理者の選任と解任は総会の決議とし、銀行取引停止や破産、資格や登録の取消し処分から一定期間内であることなどを欠格要件にします。管理者の誠実義務として、保険への加入など財産を損なわないための措置に努めることも書きます。ガイドラインはさらに、規約に管理者の氏名や社名を書かないよう勧めています。固有名詞を書くと、管理者を替えるたびに規約の変更(特別決議)が必要になるためです。任期は原則1年とし、毎年の通常総会で再任するかどうかを決めるのが望ましいとしています。再任の否決や辞任で退任が決まったときは、少なくとも3か月以上は職務を続ける定めを置く一方、解任されたときはただちに地位を失い、監事が一時的に管理者を務めることが考えられるとしています。
導入の手順について、ガイドライン第2章はまず、理事会の負担が理由なら、役員の人数や理事会の開き方を見直す、専門家を顧問に招くといった別の方法と比べるよう勧めています。メリットは事務の負担が軽くなる場合があること、デメリットは報酬で支出が増え、利益相反が起きやすくなることです。進める場合は、説明会などで区分所有者の意向を確かめながら、総会で導入推進決議を経るのが望ましいとされます。この決議は法律上必須ではなく、候補者や方向性を示して進めてよいかを確かめるものです。正式な導入決議では、管理者の選任、規約と細則の制定・改正案、管理者事務委託契約書の案、管理委託契約の変更案、管理者の報酬の予算案を議決します。理事会をなくす場合は規約の変更が必要で、区分所有法第31条第1項により、区分所有者と議決権の各過半数が出席し、出席者とその議決権の各4分の3以上で決める特別決議になります。規約の変更以外の議案は普通決議で足りると考えられています。規約で役員を「組合員のうちから」選ぶとしているなら、選任の前か同じ総会で、組合員以外も管理者に選べるよう規約を改めます。
利益相反の防止では、管理者が区分所有者を代理する立場にあることが出発点です(区分所有法第26条第2項)。ガイドラインによると、管理者の代理行為には民法第108条が適用されるため、管理者が自分と取引したり、利益が相反する取引をしたりするとき、総会の決議か規約による許諾がなければ無権代理として無効になります。そこで規約に、利益相反取引は総会で重要な事実を説明して決議を得ると定めること、どの業者との取引を利益相反取引として扱うかを契約で決め、規約でそうみなすことが勧められています。説明する事実の例は、相手方、目的物、数量、価格、期間、取引による利益です。管理業者が管理者の場合、マンション管理適正化法第77条の2により、自社や密接な関係にある会社と取引するときは、あらかじめ説明会を開いて重要な事実を説明する義務があります。総会では、議決権を管理者や外部専門家の監事に委任状で預けず、出席するか議決権行使書を出すのが望ましいとされています。標準管理規約第46条第5項が認める代理人にも、外部の管理者は入っていません。
監督の仕組みの中心は監事です。ガイドラインは、監事は管理者が指名するのでなく総会の決議で選ぶべきだとし、少なくとも1人は外部専門家から、加えて区分所有者からも選ぶのが望ましいとしています。理事会のない型では、監事に役割が集中するためです。小規模なマンションで経済的な理由がある場合は、月1回程度の報告と区分所有者の意思を反映する仕組みを条件に、区分所有者だけから選ぶことも考えられるとしています。監事の権限は標準管理規約第41条と同等以上にし、管理者が総会に出す予算案や議案を事前に調べること、管理者から監事へ定期的に報告させることも勧められています。お金の管理では、口座を管理組合のものと一目でわかる名義にし、通帳と印鑑を同じ人に持たせないようにします。外部専門家が管理者で通帳を持つなら、印鑑は監事が保管するのが望ましいとされます。管理業者が管理者の場合、管理業者が印鑑を保管することはマンション管理適正化法施行規則第87条第4項で原則として禁止されています。
区分所有者が気をつけたいのは、外部管理者方式にしても任せきりにはできないことです。管理者に問題があるときは、組合員と議決権の各5分の1以上の同意で総会の招集を請求するか(区分所有法第34条、標準管理規約第44条)、監事が臨時総会を招集し、普通決議で解任して新しい管理者を選べます。賃貸の住戸が多いマンションでは、この要件を各10分の1以上などに下げておくことも考えられます(規約変更の特別決議が必要)。招集に名簿が必要なときは、標準管理規約第31条の2にもとづいて閲覧を求めます。新築時から管理業者が管理者になっているマンションを買う場合は、分譲業者の説明で、管理者の権限の範囲、印鑑を誰が持つか、管理者が退く場合の手続などを確かめておくよう、ガイドラインは勧めています。標準管理規約とガイドラインは参考のひな形と指針なので、自分のマンションの規約と契約書の書き方を確かめてください。
- 定義と型:区分所有者以外が管理者になる方式が外部管理者方式。理事会監督型と、理事会を置かず監事と総会が見張る総会監督型がある(標準管理規約コメント全般関係③、別添1、ガイドライン第1章)
- 規約の整備:理事長を管理者とする規定をやめ、管理者の選任と解任を総会決議に。氏名や社名は書かず、任期は原則1年(別添1、ガイドライン第2章4(3))
- 導入の総会:導入推進決議を経て、管理者の選任、規約と細則、委託契約書、報酬の予算を決議。理事会をなくす規約変更は特別決議(ガイドライン第2章2(2)、区分所有法第31条第1項)
- 利益相反:自己取引などは総会で重要な事実を説明して承認。管理業者は密接な関係者との取引の前に説明会を開く義務(ガイドライン第2章6(2)、マンション管理適正化法第77条の2)
- 監督とお金の管理:監事は総会で選び、外部専門家と区分所有者から1人以上ずつが望ましい。通帳と印鑑は別々に保管(ガイドライン第2章6(2)(3)、同法施行規則第87条第4項)
- 解任の道:組合員と議決権の各5分の1以上の請求か監事の招集で総会を開き、普通決議で解任できる(区分所有法第34条、標準管理規約第44条・第41条)
出典:国土交通省 マンションにおける外部管理者方式等に関するガイドライン(平成29年6月、令和6年6月改訂、令和8年4月改訂)/国土交通省 外部管理者方式等に関するガイドラインの概要/国土交通省 マンション標準管理規約(単棟型)及び同コメント(令和7年10月17日改正。全般関係③、第35条、第41条、第44条、第46条、別添1)/国土交通省 住宅:マンション管理(標準管理規約・各種ガイドラインの掲載ページ)/e-Gov法令検索 建物の区分所有等に関する法律(令和8年4月1日施行版)