泉州しらべver0.91

標準管理規約

ルール違反への対応(勧告・差止め・使用禁止・競売)

出発点は区分所有法第6条第1項です。区分所有者は、建物の保存に有害な行為のほか、建物の管理や使用について区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない、と定められています。この禁止は、部屋を借りて住んでいる人などの占有者にも及びます(同条第3項)。こうした行為は「共同利益背反行為」と呼ばれます。管理組合の手段は、理事長による注意から裁判まで段階的に用意されています。なお、各マンションの規約は標準管理規約と条番号や書き方が違うことがあるので、自分の規約の該当条を手元に置いて読んでください。

最初の段階は、理事長の勧告や指示、警告です。標準管理規約第67条第1項は、区分所有者やその同居人、部屋を借りている人とその同居人(あわせて「区分所有者等」)が、法令、規約、使用細則などに違反したとき、または敷地や建物の中で共同生活の秩序を乱す行為をしたときに、理事長が理事会の決議を経て、是正のための勧告、指示、警告をできると定めています。理事長が一人で決めるのではなく、理事会の決議事項です(第54条第1項第十一号)。同条第2項は、同居人や部屋を貸している相手が違反したとき、区分所有者自身にも是正のための措置を取る義務があるとしています。コメントでは、理事長の承認を受けずに専有部分の工事をした場合にも、第67条による勧告や原状回復の措置を取れることが示されています(第17条関係)。

勧告で改まらないときは、規約にもとづく法的措置に進めます。第67条第3項により、区分所有者等が規約や使用細則に違反したとき、または区分所有者等やそれ以外の第三者が敷地や共用部分で不法行為をしたときは、理事長が理事会の決議を経て、管理組合を代表して、行為の差止め、排除、原状回復を求める訴訟などを進めることができます(理事会の決議事項は第54条第1項第六号)。訴えを起こす場合は、相手に対して、違約金としての弁護士費用と差止めなどにかかった費用を請求できます(第67条第4項)。受け取ったお金は管理費(第27条)に充てます(同条第5項)。理事長が区分所有者のために原告または被告になったときは、遅滞なく区分所有者に知らせます(同条第6項)。

これとは別に、区分所有法は共同利益背反行為に対する4つの請求を用意しています。標準管理規約第66条は、区分所有者や占有者がこうした行為をしたか、するおそれがあるときに、区分所有法第57条から第60条までにもとづく措置を取れると確認しています。一つ目の第57条は、行為の停止、行為の結果の除去、予防のための措置を求める差止め請求です。請求できるのは他の区分所有者全員か管理組合法人で、訴訟を起こすには集会(総会)の決議が必要です(同条第2項)。決議の割合は法律に別の定めがないため、出席者とその議決権の各過半数で決める普通決議になります(第39条第1項)。管理者(標準管理規約では理事長)や集会で指定された区分所有者が、全員のために訴えを起こすこともできます(第57条第3項)。占有者の行為にも同じ請求ができます(同条第4項)。

差止めでは足りないときの手段が、第58条から第60条です。第58条は、共同生活上の障害が著しく、差止め請求では障害を取り除いて共同生活を保つことが難しいとき、訴えによって相当の期間、その区分所有者が専有部分を使うことを禁止するよう請求できると定めています。第59条は、他の方法では難しいときに、その区分所有者の区分所有権と敷地利用権の競売を訴えで請求できるとしています。競売の申立ては判決が確定した日から6か月を過ぎるとできなくなり(同条第3項)、競売を申し立てられた本人や、本人の計算で買おうとする人は買受けを申し出られません(同条第4項)。第60条は占有者の場合で、部屋を使う契約の解除と、専有部分の引渡しを訴えで求めます。引渡しを受けた人は、遅滞なく、その部屋を占有する権原のある人に引き渡します(同条第3項)。

第58条から第60条の決議要件は、2026年4月1日施行の改正で変わりました。e-Govで改正前後の条文を見比べると、以前は区分所有者と議決権の各4分の3以上の賛成が必要で、欠席者も含めた全体が分母でした。改正後は、区分所有者の過半数で議決権の過半数を持つ人が出席し、出席した区分所有者とその議決権の各4分の3以上で決めます(第58条第2項、第59条第2項と第60条第2項で準用)。出席の割合は規約でこれより高くできます。決議の前には、相手に弁明する機会を与えなければなりません(第58条第3項、同じく準用)。標準管理規約は第47条第3項第四号でこれらの訴えの提起を特別決議の事項とし、同条第11項で組合員または占有者に弁明の機会を与えると定めています。第57条の差止め請求の訴えは、この特別決議の列挙に入っていません。

管理費等の長期の滞納も、競売請求の対象になりえます。標準管理規約に付いた別添3(滞納管理費等の回収のフローチャートと解説)は、長期かつ多額の滞納を第6条の共同利益背反行為と認めた裁判例を紹介しています。そのうえで、第59条の競売請求は、区分所有法第7条の先取特権の実行や、滞納者の財産への強制執行でも回収できない場合などに検討するもので、その前提として滞納者の財産をできるだけ調べておくべきだとしています。また、競売請求の前に第57条の差止め請求や第58条の使用禁止請求を経る必要はないと考えられる、と書いています。競売で部屋を買い受けた人は、第8条により滞納分を支払う義務を負うため、新しい所有者から回収できる見込みが出てきます。

所有者の行方がわからない部屋は、違反への対応とは別の仕組みで扱います。標準管理規約第67条の3は、区分所有者を知ることができないか所在がわからないとき、理事長が理事会の決議を経て、その人を除いて総会の決議ができるようにする裁判を請求できると定めています。詳しくは「令和7年10月の改正のポイント」の記事で扱っています。勧告から競売までのどの段階に進むかは、理事会や総会の決議を経て決めることになり、個別の事案が条文の要件に当たるかどうかは、弁護士などの専門家に相談して確かめる必要があります。

出典:e-Gov法令検索 建物の区分所有等に関する法律(令和8年4月1日施行版)/国土交通省 マンション標準管理規約(単棟型)・同コメント(令和7年10月17日改正)

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