管理組合の会計(予算・決算・帳簿)
管理組合の会計の決まりは、標準管理規約の第7章「会計」にまとまっています。会計年度は第56条で「毎年○月○日から翌年○月○日まで」と空欄になっていて、日付は各マンションが決めます。理事長は新しい会計年度が始まってから2か月以内に通常総会を招集するので(第42条第3項)、会計年度の区切りが総会の時期も決めることになります。収入は区分所有者が納める管理費・修繕積立金と、駐車場などの使用料で、支出はそれぞれの使い道を定めた第27条から第29条に従って充てます(第57条)。使用料は、その施設の管理に充てた残りを修繕積立金として積み立てます(第29条)。修繕積立金は管理費と区分して経理しなければなりません(第28条第4項)。
予算は、理事会が収支予算案と事業計画案を決め(第54条第1項第一号)、理事長が通常総会に出して承認を受けます(第58条第1項)。年度の途中で予算を変える場合も、理事長が変更案を臨時総会に出して承認を受けます(同条第2項)。困るのは、年度が始まってから総会で予算が承認されるまでの空白の期間です。第58条第3項は、この間に、経常的で支出がやむを得ない通常の管理の経費と、総会の承認を得て進めている施工期間の長い工事の経費について、理事会の承認を得れば支出できるとしています。コメントは、通常の管理の経費は前年度の支出額のおよその範囲内であることが必要としています。こうして支出した分は、予算が承認されると、その予算による支出とみなされます(同条第4項)。
予算の外で支出できる場面は、ほかに二つあります。一つは、災害などで総会を開くのが難しいときです。理事会は応急的な修繕工事の実施を決議でき(第54条第1項第十五号)、その費用に充てる資金の借入れと修繕積立金の取崩しも決議できます(同条第2項)。理事長は、この決議に基づいて支出します(第58条第5項)。もう一つは、災害などの緊急時に、理事長が敷地と共用部分等の保存行為を行う場合で、そのために必要な支出ができます(第58条第6項、第21条第6項)。
決算は、理事長が収支決算案を作り、監事の会計監査を経たうえで通常総会に報告し、承認を受けます(第59条)。監事は、業務の執行と財産の状況を監査して結果を総会に報告し、いつでも理事に報告を求めたり、財産の状況を調べたりできます(第41条)。区分所有法も、管理者は集会で毎年1回一定の時期に事務の報告をしなければならないと定めています(第43条)。決算で管理費が余れば翌年度の管理費に回し、管理費等が足りなければ、管理費等の負担割合に応じて、その都度必要な額の負担を組合員に求めることができます(第61条)。
管理費等と使用料は、組合員が自分で開いた預金口座から口座振替で管理組合の口座に入れ、当月分を別に定める徴収日までにまとめて集めます(第60条第1項)。コメントは、徴収日を規約本文に書かず別に定めるのは、管理会社や金融機関が変わったときに納入期日を変えやすくするためと説明しています。また、この書き方は管理適正化法施行規則が定める収納方法を前提にしていて、ほかの方法をとるなら実状に合った規定にする必要があるとしています。管理組合は自分名義の預金口座を開きます(第62条)。印鑑などは金庫など施錠できる場所に置き、印鑑と鍵を理事長と副理事長で分けて持つなどの扱いを、総会の承認を得て細則に定めておくことが望ましいとされています。納めたお金は、返還や分割を求めることができません(第60条第7項)。
期日までに納めない組合員には、遅延損害金と、違約金としての弁護士費用等、督促と徴収の費用を加えて請求でき(第60条第2項)、理事会の決議で理事長が訴訟その他の法的措置をとれます(同条第4項)。コメントは、これらは請求しない合理的な事情がない限り請求すべきとし、遅延損害金の利率は利息制限法や消費者契約法の水準より高く設定することも考えられるとしています。借入れについては、第63条が、修繕積立金で行う特別の管理(第28条第1項)のために必要な範囲で借入れができると定めています。借りた場合は、修繕積立金から返済に充てることができます(第28条第3項)。
理事長は、会計帳簿、什器備品台帳などの帳票類を作って保管し、組合員や利害関係人から理由を付けた書面で請求があれば閲覧させなければなりません(第64条第1項)。コメントは、保管するものとして、領収書、請求書、管理委託契約書、修繕工事請負契約書、駐車場使用契約書、保険証券などを挙げています。理事長の責任で帳票類がきちんと保管されず作り直しが必要になったときは、理事長が費用を負担するなどの責任を負うとも書かれています。閲覧ではなく、修繕積立金の積立て状況など必要な情報だけを書いた書面の交付を求められたときは、費用を請求者に負担させて交付できます(同条第3項)。第64条は、電磁的方法を使えない場合と使える場合の二通りの書き方が示されているので、自分の規約がどちらに当たるかを確かめておくとよいでしょう。
- 会計年度:日付は各マンションが決める。通常総会は新年度開始後2か月以内(第56条、第42条第3項)
- 予算:通常総会で承認。承認前でも経常的な管理費用などは理事会の承認で支出できる(第58条第1項〜第4項)
- 決算:監事の会計監査を経て通常総会で承認。管理費の余りは翌年度へ(第59条、第61条)
- 徴収:組合員の口座から管理組合の口座へ口座振替。滞納には遅延損害金・弁護士費用等を請求できる(第60条、第62条)
- 借入れ:修繕積立金で行う特別の管理に必要な範囲で可能。返済に修繕積立金を充てられる(第63条、第28条第3項)
- 帳票類:理事長が作成・保管し、理由を付けた請求があれば閲覧させる(第64条)
出典:国土交通省 マンション標準管理規約(単棟型)・同コメント(令和7年10月17日改正)/e-Gov法令検索 建物の区分所有等に関する法律(令和8年4月1日施行)