監事の職務と権限
標準管理規約(単棟型)第35条は、理事長や理事と並べて監事を役員の一つに挙げ、人数は「○名」と空欄にしています。監事は理事と同じく総会の決議で組合員のうちから選びます(同条第2項)。一方、理事会は理事で構成すると定められているので(第51条第1項)、監事は理事会の構成員ではありません。理事会が理事の職務の執行を監督するのに対し、監事は理事会の外に立って、管理組合の業務と財産の状況を確かめる役割を受け持ちます。標準管理規約はひな形なので、自分のマンションの規約の条番号や書き方は違うことがあります。
監事の基本の職務は、管理組合の業務の執行と財産の状況を監査し、その結果を総会に報告することです(第41条第1項)。コメントは、ここに、理事が総会に出そうとする議案を調べ、法令や規約に違反する事項、著しく不当な事項があれば総会に報告することも含まれると説明しています。会計の面では、理事長は毎年度の収支決算案を監事の会計監査を経て通常総会に報告し、承認を得ます(第59条)。書類が電磁的記録(パソコンのファイルなど)で作られている場合は、必要に応じて遠くからでも電磁的方法で監査することが想定されています。
監査を実際に進めるための権限が第41条第2項です。監事はいつでも、理事と、理事長が理事会の承認を得て採用した職員(第38条第1項第二号)に業務の報告を求め、業務と財産の状況を調べることができます。コメントは、第1項を受けて報告請求権と調査権を具体的に定めたものと位置づけています。情報が監事に届く仕組みもあります。理事は、管理組合に著しい損害を及ぼすおそれのある事実を見つけたら、直ちに監事に報告しなければなりません(第40条第2項)。コメントによれば、この報告義務は監事が監査をしやすくするために置かれています。
理事会との関わりでは、監事は理事会に出席し、必要があると認めるときは意見を述べなければなりません(第41条第4項)。コメントによると、以前は出席「できる規定」でしたが、監査機能を強めるために出席と意見陳述を義務にしました。ただし、招集の手続を踏み、理事の半数以上が出席していれば理事会は開けるので、監事が欠席しても決議の効力には影響しないとされています。理事会の招集通知は理事と監事の両方に出し、通知期間を縮めるには理事と監事の全員の同意が要ります(第52条第4項の読み替え)。また、共用部分の軽微な変更などを理事会の決議事項に加える場合には、監事による監視機能を強めるなどの配慮が必要だとコメント第54条関係は述べています。
監事が不正を見つけたときの手順は、第41条第5項から第7項にあります。理事が不正の行為をし、またはするおそれがあるとき、法令、規約、使用細則等、総会や理事会の決議に違反する事実や著しく不当な事実があるときは、遅滞なく理事会に報告しなければなりません。報告を受けた理事会は、その事実を検討する必要があります。報告のために必要なら、監事は理事長に理事会の招集を請求できます。請求の日から5日以内に、2週間以内の日を会日とする招集通知が出なければ、請求した監事が自ら理事会を招集できます。さらに、業務の執行や財産の状況に不正があると認めるときは、監事は臨時総会を招集できます(第41条第3項)。組合員の5分の1以上の同意による招集請求(第44条)とは別に、監事一人の判断で総会を開ける道です。
区分所有法には、法人になっていない管理組合の監事についての条文はなく、監事が出てくるのは主に管理組合法人の規定です。第50条は、管理組合法人には監事を置かなければならないとし、監事は理事や管理組合法人の使用人と兼ねてはならないと定めます。職務は、財産の状況と理事の業務執行の状況の監査、法令や規約への違反や著しく不当な事項があるときの集会への報告、その報告のための集会の招集です。任期は原則2年(規約で3年以内の別の期間も可)、不正があれば裁判所に解任を請求できるなどの規定も準用されます(同条第4項)。管理組合法人と理事の利益が相反する事項では、監事が法人を代表します(第51条)。標準管理規約(単棟型)の本文とコメントには、監事と理事の兼任を禁じる明文は見当たりません。法人でない管理組合では、自分の規約に兼任の定めがあるかを確かめておくとよいでしょう。なお標準管理規約でも、管理組合と理事長の利益が相反する事項では、監事か理事長以外の理事が管理組合を代表します(第38条第6項)。
監事を外部の専門家に頼む形も想定されています。第35条の「外部専門家を役員として選任できることとする場合」では、第2項から組合員要件を外し、組合員以外から理事や監事を選ぶ方法を細則で定めます(同条第4項)。コメントの別添1は、理事会を残したまま理事や監事に専門家を選ぶ型を最初のパターンに挙げ、そのチェック体制として、監事の調査権、理事会への出席と意見陳述、理事会への不正の報告、総会提出議案の調査などを並べています。理事会を置かずに外部の専門家を管理者にする型では、区分所有者から監事を選んで管理者を見張り、監査法人などの外部監査も義務づける考え方が示されています。どの型を採るかで監事の重みは変わるので、規約を見直すときは監事の人数と選び方もあわせて検討するとよいでしょう。
- 位置づけ:監事は総会で選ぶ役員で、理事会の構成員ではない(第35条第2項、第51条第1項)
- 監査:業務の執行と財産の状況を監査し総会に報告。総会提出議案の調査や決算の会計監査も含む(第41条第1項、第59条、コメント第41条関係①)
- 調査権と報告義務:理事と職員に報告を求め調査できる。理事は著しい損害のおそれを監事に報告する(第41条第2項、第40条第2項)
- 理事会への出席:出席と必要な意見陳述は義務。ただし欠席しても決議の効力に影響しない(第41条第4項、コメント第41条関係②)
- 不正への対応:理事会へ遅滞なく報告、理事会の招集請求と自らの招集、臨時総会の招集(第41条第3項・第5項〜第7項)
- 兼任と外部専門家:管理組合法人の監事は理事と兼ねられない(区分所有法第50条第2項)。外部専門家を監事に選ぶ方法は細則で定める(第35条第4項、別添1)
出典:国土交通省 マンション標準管理規約(単棟型)及び同コメント(令和7年10月17日改正)/e-Gov法令検索 建物の区分所有等に関する法律(令和8年4月1日施行版)