管理費と修繕積立金(負担の割合・使いみち・区分経理)
標準管理規約第25条第1項は、区分所有者が敷地と共用部分等の管理に要する経費に充てるため、管理費と修繕積立金を管理組合に納めると定めています。規約ではこの二つを合わせて「管理費等」と呼びます。額と賦課徴収方法(だれにいくら割り当て、どう集めるか)は総会の決議事項で(第48条第六号)、理事会だけでは変えられません。駐車場使用料などの使用料は管理費等とは別の収入として第29条に置かれています。集め方や滞納への対応、予算と決算は「管理組合の会計」の記事で扱っているので、ここでは負担の割合と使いみちに絞ります。
負担の割合について、第25条第2項は、管理費等の額を各区分所有者の共用部分の共有持分に応じて算出すると定めています。共有持分は第10条で別表第3に定めることになっており、コメントは専有部分の床面積の割合によるとしています。区分所有法も、各共有者の持分は専有部分の床面積の割合によると定め(第14条第1項)、共用部分の負担は規約に別段の定めがない限り持分に応じると定めています(第19条)。ただし面積の測り方は異なります。法は壁などの内側線で囲まれた面積(内のり)によるとし(第14条第3項)、規約で別の定めをすることも認めています(同条第4項)。標準管理規約のコメントは、共有持分の基準となる面積を壁心計算(界壁の中心線で測る方法)によるとしています。自分の規約の別表がどちらで計算しているかは、規約を開いて確かめてください。
コメント第25条関係は、負担割合を決めるときに使用頻度等は勘案しないとしています。共用部分をよく使う住戸もあまり使わない住戸も、持分に応じて負担するという考え方です。また、議決権を一戸一議決権や住戸の価値割合で決めている場合でも、管理費等の負担額はそれとは別に共有持分で算出することが考えられる、としています。管理費のうち管理組合の運営に要する費用を、組合費として管理費と分けて徴収することもできます。
住戸の持ち主が替わったときの扱いは第26条にあります。管理組合が管理費等について持つ債権は、区分所有者の特定承継人にも請求できます。特定承継人とは、売買などでその住戸を引き継いだ人のことです。コメントによると、以前は相続などの包括承継人も書いていましたが、包括承継人が債務を引き継ぐのは当然なので削ったとされています。区分所有法第8条も、第7条第1項の債権(規約や集会の決議に基づいて他の区分所有者に対して持つ債権など)は特定承継人にも行使できると定めています。前の持ち主が納めていない管理費等は、買った人にも請求できるということです。
管理費は、第27条で通常の管理に要する経費に充てると定められ、使いみちが11号にわたって並んでいます。管理員の人件費、公租公課、共用設備の保守と運転の費用、事務費、共用部分等の火災保険料や地震保険料、経常的な補修費、清掃やごみ処理の費用、委託業務費、専門家の活用に要する費用、管理組合の運営に要する費用、そのほか第32条の業務に要する費用です。コメントは、運営に要する費用には役員活動費も含まれるとし、役員が区分所有者全員の利益のために活動することを踏まえて適正な水準に設定するとしています。
その一方で、管理費を何にでも使えるわけではありません。コメント第27条関係は、管理組合は区分所有者全員が入る強制加入の団体で、居住者が任意で入る自治会や町内会とは性格が違うと説明しています。自治会費を管理費等と一体で集めている場合は、加入を強制しないこと、加入を望まない人から自治会費を集めないこと、自治会費を管理費と区分経理すること、代行徴収の負担を整理することに注意するよう求めています。一部の人だけが参加するサークルの経費や、親睦が主な目的の飲食の経費に管理費を充てるのは適切でなく、参加者が直接払うなどして賄うべきだとしています。他方、マンションやその周辺の美化や清掃、防災や防犯の活動などは、建物と敷地の管理の範囲内で行う限り可能とされています。
修繕積立金は、第28条第1項で、特別の管理に要する経費に充てる場合に限って取り崩せると定められています。取り崩せるのは、一定年数ごとの計画修繕、不測の事故などで必要になった修繕、敷地と共用部分等の改良や変更、建替えなどの再生に向けた合意形成に必要な調査、修繕積立金の管理と運用、そのほか区分所有者全体の利益のために特別に必要な管理の6つです。コメントは、修繕積立金を必ず積み立てることとした理由を、計画的な維持修繕工事が建物の経済的価値を保つのに重要だからと説明しています。また、修繕の項目には工事費だけでなく、計画立案や工事履歴の調査、設計といった準備段階の費用も含まれるとしています。取崩しは総会の決議事項です(第48条第十号)。
第28条第4項は、修繕積立金を管理費と区分して経理しなければならないと定めています。分けておけば、将来の修繕に使えるお金がいくら積み上がっているかを、日々の支出と混ぜずに確かめられます。コメントは、分譲時に購入者から一括で集める修繕積立基金や、修繕時に不足を補うため集める一時負担金も、修繕積立金として積み立てて区分経理すべきだとしています。使用料は、その施設の管理に充てたうえで残りを修繕積立金として積み立てます(第29条)。機械式駐車場があるときは維持修繕に多額の費用がかかるため、管理費とも修繕積立金とも分けて経理することもできます(コメント第29条関係)。さらにコメント第48条関係は、毎年の総会で長期修繕計画上の積立予定額と実際の積立額の差を示し、段階的に増額する方式なら今後の変更予定時期と額を説明すると、合意形成に有効だとしています。
- 負担の割合:管理費等は共用部分の共有持分に応じて算出し、使用頻度等は勘案しない(標準管理規約第25条第2項・コメント、区分所有法第14条・第19条)
- 額の決定:管理費等と使用料の額と賦課徴収方法は総会の決議事項(標準管理規約第48条第六号)
- 承継人:管理費等の債権は売買などで住戸を引き継いだ特定承継人にも請求できる(標準管理規約第26条、区分所有法第8条)
- 管理費の使いみち:通常の管理に要する経費の11号。自治会費との混同やサークル、親睦飲食への充当は適切でない(標準管理規約第27条・コメント)
- 修繕積立金の取崩し:計画修繕など特別の管理6項目に限る。取崩しは総会決議(標準管理規約第28条第1項、第48条第十号)
- 区分経理:修繕積立金は管理費と分けて経理し、修繕積立基金や一時負担金も含める。使用料は管理費用に充てた残りを修繕積立金へ(標準管理規約第28条第4項・コメント、第29条)
出典:国土交通省 マンション標準管理規約(単棟型)・同コメント(令和7年10月17日改正)/e-Gov法令検索 建物の区分所有等に関する法律(令和8年4月1日施行版)