総会の決議要件(普通決議と特別決議)
総会の決議には、出席者の議決権の過半数で決める普通決議と、より多くの賛成が要る特別決議があります。どちらで決めるかは議案の中身で決まり、理事会が選べるものではありません。標準管理規約では第47条がこの物差しを定め、第48条が総会で決める事項を並べています。第47条第3項から第6項に挙がっていない事項は、第48条のどの号に当たっても普通決議です。招集通知や委任状の扱いは「総会の招集・議決権・委任状と議決権行使書」、令和7年改正で変わった点の一覧は「令和7年10月の改正のポイント」の記事で扱っています。
普通決議では、まず議決権総数の過半数を持つ組合員が出席していることを確かめ(第47条第1項)、出席組合員の議決権の過半数で決めます(同条第2項)。コメント②によると、分母には議長も、書面や代理人で議決権を使った人も含まれ、過半数の賛成が得られなかった議案は否決です。賛否が同数なら否決になり、棄権した人の議決権も分母に残ります。WEB会議で議決権を持って参加した組合員は出席に数えますが、傍聴だけの組合員は数えません(コメント①)。区分所有法第39条第1項は、出席者の人数と議決権の各過半数を原則としつつ、規約で別の定めをすることを認めています。標準管理規約は議決権だけで数える書き方をとっています。
普通決議の基準は、思ったより低い場合があります。過半数が出席した総会で出席者の過半数が賛成すれば決まるので、議決権総数の4分の1を少し超える賛成で可決されることもあります。コメント⑥はこの点を挙げ、大規模修繕工事のように多額の費用がかかる事項は、組合員総数と議決権総数の過半数、または議決権総数の過半数で決めると規約に定めてもよいとしています。総会で特別決議の方法で決めると決議することもでき、その事項は特別決議の対象になります(第47条第3項第五号)。反対に、戸数の少ないマンションでは、定足数を改正前と同じ議決権総数の半数以上とすることも考えられるとされています(コメント④)。
特別決議(4分の3)の対象は第47条第3項に並んでいます。規約の制定、変更、廃止、敷地と共用部分等の変更、それに伴って必要になる専有部分の保存行為等、区分所有法第58条から第60条の訴えの提起です。組合員総数の過半数で議決権総数の過半数を持つ組合員が出席し、出席組合員とその議決権の各4分の3以上が賛成すれば決まります。普通決議と違い、人数と議決権の両方を数えます。共用部分の変更でも、形や働きを大きく変えない工事は対象から外れて普通決議になり、耐震改修促進法第25条第2項の認定を受けた建物の耐震改修も普通決議で行えます(コメント⑤)。なお、区分所有法第17条第1項は、共用部分の変更に限って4分の3を規約で2分の1超まで下げられるとしています。規約の変更を定める第31条第1項にはこの定めがなく、標準管理規約はどちらも4分の3のままです。
第47条第4項は、4分の3より低い3分の2で決められる事項を定めています。一つは、設置や保存に瑕疵(欠陥)があって人の権利や利益を侵すおそれがあるとき、その瑕疵を取り除くための共用部分の変更です。コメント⑦は、耐震性や火災への安全性の不足、外壁の剝離で周りに危害が出るおそれ、給排水管の腐食で衛生上有害になるおそれを例に挙げ、ここでいう他人にはそのマンションの区分所有者も含まれるとしています。二つ目は、高齢者や障害者の移動の負担を減らすバリアフリー化のための変更です。三つ目は、建物の価格の2分の1を超える部分が滅失したときの共用部分の復旧で、区分所有法第61条第5項に根拠があり、議事録に各人の賛否を残します(同条第6項)。2分の1以下の滅失の復旧は第48条第十二号の事項で、普通決議です。定足数は4分の3の場合と同じです。
工事ごとの当てはめは、コメント⑧が例を示しています。普通決議でよいとされるのは、手すりの追加や階段へのスロープ併設、柱に炭素繊維シートを巻く耐震補強、防犯カメラや防犯灯、加工の小さいオートロックや宅配ボックスや充電設備、既存の配管スペースを使う光ファイバーの敷設です。鉄部塗装、外壁補修、屋上防水、給排水管の更生や更新、エレベーター設備の更新といった計画修繕、窓枠、窓ガラス、玄関扉の一斉交換、不要になった高置水槽などの撤去も普通決議の例です。階段室を改造したり外付けにしたりしてエレベーターを新設する工事や、基礎を切って免震化する工事は3分の2の例、集会室や駐車場の大規模な増改築は4分の3の例です。最後は工事の具体的な中身で個別に判断する、とコメントは断っています。
建替えなどのマンション再生等の決議は、出席者ではなく全体が分母です(第47条第5項・第6項)。建替え、建物更新、取壊しの決議は組合員総数と議決権総数の各5分の4以上、建物敷地売却と建物取壊し敷地売却の決議は、これに敷地利用権の持分の価格を加えた各5分の4以上で行います(区分所有法第62条第1項、第64条の5から第64条の8)。耐震性や火災への安全性の不足、外壁の剝落のおそれ、配管の著しい劣化、バリアフリー基準への不適合といった区分所有法第62条第2項の事由に当たる建物では、各4分の3以上に下がります。欠席や無回答は賛成に数えられないので、実際には反対と同じ働きをします。賛否が売渡し請求の相手方になるかどうかに関わるため、誰が賛成し誰が反対したかが分かる形で決議する必要があります(コメント⑨)。
数え方の決まりも確かめておきます。書面、電磁的方法、代理人で議決権を使った組合員は、人数も議決権も出席に数えます(第47条第7項)。所有者不明専有部分管理人は組合員とみなされます(同条第8項)。所在等不明区分所有者の除外の裁判が確定すると、その人と議決権と敷地利用権の持分は、組合員総数、議決権総数、持分の総数から外れます(第67条の3第3項、区分所有法第38条の2)。定足数の計算にも、全体を分母とする再生等の決議にも効くため、除外の裁判を経た管理組合では、決議に必要な数が変わります。各マンションの規約の割合が標準管理規約と同じとは限らないので、議案を出す前に自分の規約の該当条を確かめてください。
- 普通決議:議決権総数の過半数が出席し、出席組合員の議決権の過半数。同数は否決(標準管理規約第47条第1項・第2項、コメント②)
- 特別決議(4分の3):規約の変更、共用部分等の変更、第58条〜第60条の訴えなど。人数と議決権の各過半数が出席し、出席者の各4分の3以上(第47条第3項、区分所有法第17条第1項・第31条第1項)
- 3分の2:瑕疵の除去とバリアフリー化のための変更、建物価格の2分の1超が滅失したときの復旧(第47条第4項、区分所有法第17条第5項・第61条第5項)
- 再生等の決議:建替え、建物更新、取壊しは総数の各5分の4以上。敷地売却型は持分の価格も各5分の4以上。第62条第2項の事由があれば各4分の3以上(第47条第5項・第6項、区分所有法第62条)
- 工事の当てはめ:計画修繕や防犯カメラは普通決議、エレベーター新設は3分の2などの例(第47条関係コメント⑧)
- 数え方:書面や代理人による行使は出席に算入。所在等不明区分所有者は除外の裁判確定後に総数から外れる(第47条第7項、第67条の3第3項、区分所有法第38条の2)
出典:国土交通省 マンション標準管理規約(単棟型)及び同コメント(令和7年10月17日改正)/e-Gov法令検索 建物の区分所有等に関する法律(令和8年4月1日施行版)