泉州しらべver0.91

標準管理規約

区分所有法改正と総会の運営(出席者基準・特別決議の定足数・所在等不明区分所有者の除外)

令和8年(2026年)4月1日に施行された改正区分所有法のうち、管理組合の総会の進め方に直接かかわるのは三つあります。決議を出席者の多数決で行うこと、特別決議に出席の定足数が付いたこと、所在等不明区分所有者を決議の数え方から外す裁判の制度ができたことです。改正は令和7年法律第47号で、令和7年5月30日に公布されました。この記事は、e-Gov法令検索の令和8年4月1日施行版の条文で確かめた内容を、法律の側から整理します。標準管理規約の第47条の読み方は「総会の決議要件」の記事、規約改正の全体像は「令和7年10月の改正のポイント」の記事にあります。なお、法律は総会を「集会」と呼びます。以下では総会と書きます。

まず普通決議です。第39条第1項は、総会の議事を、出席した区分所有者とその議決権の各過半数で決めると定めています。国土交通省の説明会資料は、改正前は全区分所有者を母数とする過半数で、総会に出ない無関心な人が反対と同じ扱いになって決議を妨げていた、と改正の背景を説明しています。書面や代理人で議決権を行使した人は出席者に数えます(第39条第2項)。電磁的方法(メールなど)による行使も、規約または総会の決議で認めれば、書面と同じ扱いで出席に数えます(同条第3項)。第39条第1項には出席人数の下限(定足数)の定めがなく、規約で別の定めを置けます。標準管理規約は第47条第1項で、議決権総数の過半数の出席を総会成立の条件にしています。

次に特別決議です。共用部分の変更(形状や効用が著しく変わらないものは除く)は第17条第1項、規約の設定・変更・廃止は第31条第1項が定めています。どちらも、区分所有者の過半数で、かつ議決権の過半数を持つ人が出席して初めて決議ができ、そのうえで出席した区分所有者とその議決権の各4分の3以上の賛成が要ります。条文上、出席の割合は規約で過半数より高くできます。改正前の特別決議は全体の4分の3でしたが、国土交通省の標準管理規約のコメント(第47条関係④)によれば、今回、出席者による決議が可能になるのと同時に、出席の定足数が設けられました。人数と議決権の両方で足りているか、総会の冒頭で確かめることになります。

4分の3の扱いは、二つの条文で少し違います。第17条第1項は、規約で4分の3を2分の1を超える割合まで下げられると括弧書きで定めています。第31条第1項の規約の変更には、この括弧書きがありません。また、共用部分の設置や保存に瑕疵があって他人の権利や利益を侵すおそれがある場合の、その瑕疵を除くための変更と、高齢者や障害者の移動の負担を減らすための変更は、第17条第5項により4分の3が3分の2になります。専有部分の使用に特別の影響が及ぶ人の承諾が要る点は、これまでと同じです(第17条第2項、第31条第1項後段)。国土交通省の説明会資料は、建替え決議のように区分所有権の処分を伴う決議は出席者基準の対象外としています。

所在等不明区分所有者の除外は、第38条の2に定められました。裁判所は、区分所有者を知ることができない、またはその所在を知ることができないときに、その人以外の区分所有者または管理者の請求により、その人を除いた区分所有者で総会の決議をしてよいという裁判ができます(第1項)。裁判があると、その人は総会で議決権を持たなくなります(第2項)。第17条、第31条、第39条の母数には「議決権を有しないものを除く」と書かれているので、除外された人は人数にも議決権にも数えません。区分所有者が請求したときは、管理者に遅滞なく知らせます。管理者がいなければ建物内の見やすい場所に掲示します(第3項)。総会の決議や規約だけで同じ扱いにすることはできず、裁判が前提です。

裁判の手続は第86条にあります。申立ては建物の所在地を管轄する地方裁判所にします(第1項)。裁判所は申立てがあったことと、異議がある所在等不明区分所有者は一定期間内に届け出るべきことを公告します。この期間は1か月以上で、期間が過ぎてからでないと裁判はされません(第2項)。裁判は確定して初めて効力が生じます(第3項)。裁判のあとで所有者とその所在が分かったときは、利害関係人の申立てにより、裁判所は取り消さなければなりません(第5項)。標準管理規約の第67条の3は、理事長が理事会の決議を経て請求する手続を置いています。確定後は、その人と議決権、敷地利用権の持分を総数から外し、招集通知も出さなくてよいと定めます。コメントは、理事長が請求するときは管理者として行う点に注意するよう述べています。

数字で試してみます。これは筆者の試算で、60戸、1戸1議決権、共有者なし、規約は標準管理規約どおりとします。総会の成立には31戸分以上の出席が要ります。普通決議は、31戸が出席すれば16戸の賛成で決まり、全体の約27パーセントです。標準管理規約のコメント(第47条関係⑥)も、この方式では全体の4分の1を超える賛成で決まることを挙げ、大規模修繕のように費用が大きい事項は、規約でより厳しい要件にすることもできるとしています。特別決議は、31戸が出席すれば24戸の賛成(31の4分の3は23.25)で、全体の40パーセントです。全体を母数にしていた改正前は45戸でした。所在等不明の区分所有者が1戸いて除外の裁判が確定すれば、母数は59戸になり、総会成立の下限は30戸分になります。

確かめておく点があります。自分のマンションの規約で、総会の定足数が「半数以上」のままか、特別決議が「組合員総数及び議決権総数の4分の3以上」と書かれたままかを見てください。標準管理規約のコメント(第47条関係④)は、戸数の少ない小規模なマンションでは、総会成立の定足数を改正前と同じ「議決権総数の半数以上」にすることもありうるとしています。規約の文言を新しい法律に合わせて直すかどうかは、各マンションで決めます。そもそも出席者基準は、少ない出席で何でも決まるという意味ではありません。委任状や議決権行使書を出した人も出席に数えるので、議案書を丁寧に作って、事前に意思を寄せてもらうことが、決議の数を集める近道です。

出典:e-Gov法令検索 建物の区分所有等に関する法律(令和8年4月1日施行版)/国土交通省 マンション標準管理規約(単棟型)及び同コメント(令和7年10月17日改正)/国土交通省住宅局・法務省民事局 マンションの管理・再生の円滑化等のための改正法 説明会資料

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