泉州しらべver0.91

標準管理規約

共用部分の変更と大規模修繕の決議(形状又は効用の著しい変更・軽微な変更)

共用部分の工事を総会にかけるとき、最初に決めるのは、その工事が保存行為、管理、変更のどれにあたるかです。区分所有法は、共用部分の変更を第17条、共用部分の管理を第18条で分けています。第17条第1項は、共用部分の変更のうち「その形状又は効用の著しい変更を伴わないもの」をかっこ書きで除いています。第18条第1項は、管理に関する事項を「前条の場合を除いて」集会の決議で決めると定めています。二つの条文を読み合わせると、著しい変更を伴わない変更は、第17条の特別な多数決ではなく、第18条の管理の決議で足りることになります。標準管理規約(単棟型、令和7年10月17日改正)のコメントも、著しい変更を伴わない共用部分の変更は区分所有者と議決権の各過半数で決められるとしています(第47条関係⑤)。条文は「保存行為」「軽微な変更」を定義していないので、個々の工事の分類は、後で見るコメントの例を手がかりにします。

保存行為は、決議を要しない行為の入り口です。区分所有法第18条第1項ただし書は、保存行為を各共有者ができると定めています。保存行為とは、壊れた箇所を直すなど、共用部分の今の状態を保つ行為のことです。ただし、標準管理規約は第21条でこの原則を変えています。敷地と共用部分等の管理は管理組合の責任と負担で行うのが原則で(第21条第1項)、区分所有者が保存行為をするには、バルコニー等の通常の使用に伴うものを除き、あらかじめ理事長に申請して承認を受ける必要があります(同条第3項)。コメントは、これを区分所有法第18条第2項に基づく規約の別段の定めだと説明しています(第21条関係①)。災害等の緊急時だけは、理事長が総会や理事会の決議によらずに必要な保存行為をできます(同条第6項)。

保存行為にも変更にもあたらない工事は、管理として普通決議で決まります。区分所有法第39条第1項は、集会の議事を、出席した区分所有者と議決権の各過半数で決めるとしています。標準管理規約では、総会の成立に議決権総数の過半数の出席が必要で(第47条第1項)、議事は出席組合員の議決権の過半数で決まります(同条第2項)。コメントは、鉄部塗装、外壁補修、屋上等の防水、給排水管の更生や更新、照明、消防用設備、エレベーター設備の更新といった計画修繕工事を、普通決議で実施できると考えています(第47条関係⑧キ)。大規模修繕の中身の大半は、この区分に入ります。ただし、大規模修繕を進めるときは、普通決議で足りるかどうかのほかに、総会で何を決めるかも確かめる必要があります。長期修繕計画の作成や変更(第48条第五号)と、計画的な修繕などの特別の管理の実施およびそれに充てる修繕積立金の取崩し(同条第十号、第28条第1項)は、総会の決議事項です。

普通決議には注意点があります。出席が議決権総数の過半数で、その過半数が賛成すれば決まるので、議決権総数の4分の1を超える賛成で通ることがあります。コメントはこの点を指摘したうえで、大規模修繕のように多額の費用がかかる事項については、より高い出席や賛成の割合を規約に定めることも考えられるとしています(第47条関係⑥)。標準管理規約どおりの規約では、大規模修繕の議案も普通決議で足ります。

形状又は効用の著しい変更を伴う変更は、特別な多数決になります。区分所有法第17条第1項は、区分所有者の過半数であって議決権の過半数を持つ者が出席し、出席した区分所有者と議決権の各4分の3以上で決めると定めています。規約で、この割合を4分の3より下げることもできますが、2分の1を超える割合に限られます。標準管理規約はこれを第47条第3項第二号に写し、組合員総数の過半数かつ議決権総数の過半数の出席と、出席組合員およびその議決権の各4分の3以上の賛成を求めています。この号は、著しい変更を伴わないものと、耐震改修促進法の認定を受けた耐震改修を除いています。コメントが特別多数決議になると考える例は、集会室、駐車場、駐輪場の増改築のうち大規模なものや、著しい加工を伴うものです(第47条関係⑧ク)。令和7年の区分所有法改正で、この決議は出席者の多数決で行えるようになり、組合員総数と議決権総数の各過半数の出席という定足数が加わりました(同④)。令和8年4月1日施行版の第17条第1項は、この改正を反映した文言です。

特別多数決議の割合が3分の2に下がる場合もあります。区分所有法第17条第5項は二つの場合を挙げています。一つは、共用部分の設置または保存に瑕疵があって他人の権利や利益が侵害されるおそれがある場合に、その瑕疵を除くために必要な変更です。もう一つは、高齢者や障害者等の移動や施設の利用の負担を軽くし、利便性と安全性を高めるために必要な変更です。この場合、第17条第1項と第3項の「四分の三」は「三分の二」になります。標準管理規約は第47条第4項第一号イとロで同じ内容を定めています。コメントによれば、瑕疵にあたるのは、耐震性や火災への安全性の不足、外壁の剥離で周辺に危害が及ぶおそれ、配管の腐食による衛生上の害などです(第47条関係⑦)。バリアフリー化では、階段へのスロープの併設や手すりの追加は普通決議、階段室の改造や外壁への外付けでエレベーターを新設する工事は3分の2の決議と考えられています(同⑧ア)。耐震改修も、基本的構造部分への加工が小さい補強は普通決議、大きいものは3分の2とされています(同⑧イ)。最終的には工事の具体的な内容による個別の判断です。

工事が専有部分や専用使用部分に及ぶときは、決議の割合とは別の手続が加わります。共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすときは、その専有部分の所有者の承諾が必要です(区分所有法第17条第2項。標準管理規約は専用使用部分も加えて第47条第10項に規定)。この承諾について、規約は正当な理由なく拒否してはならないとしています。また、共用部分の変更や管理に伴って、専有部分の配管など共用部分と一体になった設備を同時に工事したい場面があります。区分所有法第17条第3項と第18条第4項は、規約に特別の定めがあれば、その専有部分の保存行為等も集会の決議で決められるとしています。標準管理規約は第21条第2項でこの定めを置き、総会の決議を経て管理組合が行うとしています(実施は第48条第九号の総会決議事項)。ただし、各マンションの規約は標準管理規約と違うことがあります。お住まいの規約に第21条第2項にあたる定めがなければ、専有部分の配管の同時更新を総会決議で進める根拠が規約にありません。

理事の実務では、次の順で確かめます。まず、議案の工事を保存行為、管理、著しい変更のどれとみるかを、コメントの例と工事の具体的な内容から決めます。次に、自分の規約の総会の議決要件にあたる条(標準管理規約の第47条)を開き、定足数と賛成の割合を確かめます。規約が区分所有法の割合を下げていないか、大規模修繕に高い割合を定めていないかも、ここで分かります。そして、議案書には、どの決議に当たるのかと、その根拠の条文を書いておきます。分類が微妙な工事は、マンション管理士や弁護士に、総会にかける前に相談するのが確実です。

出典:国土交通省 マンション標準管理規約(単棟型)及び同コメント(令和7年10月17日改正)/e-Gov法令検索 建物の区分所有等に関する法律(令和8年4月1日施行版)

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