自分のマンションの規約を見直す手順
規約を見直すきっかけとして、いまいちばん大きいのは2026年4月1日施行の改正区分所有法です。国土交通省の「手続の留意点」によると、各マンションの規約のうち改正法に抵触する規定は、施行日以降は効力を失います。特に、令和7年改正より前の標準管理規約にならった規約では、規約の変更などを決める総会の定足数と決議要件が改正法と合わなくなっています。改正の中身は「令和7年10月の改正のポイント」の記事で扱っています。標準管理規約はあくまで国のひな形なので、自分の規約がどの年の版をもとにしているのか、独自に書き換えた条がどこかを、最初に確かめておくと作業が進めやすくなります。
規約の設定・変更・廃止は、総会の特別決議で決めます(区分所有法第31条第1項)。2026年4月からは、区分所有者の過半数で議決権の過半数を持つ人が出席し、出席した区分所有者とその議決権の各4分の3以上が賛成すれば決まります。出席の割合は、規約でこれより高く定めることもできます。書面や代理人で議決権を行使した人は出席者に数えます(第39条第2項)。国土交通省は、旧規約の「議決権総数の半数以上」という定足数に対し、改正法は人数と議決権の両方について「過半数」を求めており、ちょうど半数では足りない点に注意するよう示しています。2026年4月1日以降に招集手続を始める総会では、旧規約の定足数・決議要件の部分は改正法に抵触して無効となり、改正法の要件で決議します。
規約の変更が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすときは、総会で4分の3以上の賛成があっても、その人の承諾を得なければなりません(区分所有法第31条第1項後段)。標準管理規約は同じ内容を第47条第9項に置き、承諾を求められた組合員は正当な理由がなければ拒否してはならない、と書き加えています。ただし、これはひな形の書き方なので、自分の規約にあるかどうかを確かめてください。また、一部の区分所有者だけが使う一部共用部分に関する事項を全員の規約で変えるときは、その部分を使う区分所有者の4分の1を超える人、または議決権の4分の1を超える人が反対すると変更できません(同条第2項)。
自分の規約と標準管理規約を比べるには、新旧対照表を作るのが確実です。国土交通省は、令和7年改正の単棟型について、改正後と改正前を左右に並べ、改正部分に傍線を引いた新旧対照表(PDF)と、改正箇所を見え消しにしたWord版を公開しています。自分の規約の対照表は、左に改正案、中央に現行の条文、右に備考を置き、備考には参考にした標準管理規約の条番号や、変える理由を書いておくと、総会で説明しやすくなります。国の改正の概要では、変更しないと区分所有法に抵触するなど変更が必須の項目に「◎」、抵触はしないが合わせることが望ましい項目に「○」が付いています。まず◎の条(総会の決議要件の第47条、招集通知の第43条など)から手を付けると、優先順位を決めやすくなります。
自分の規約と見比べるときは、次の点から確かめると要点を押さえやすくなります。総会の定足数と決議要件が改正法に合っているか。WEB会議や電子投票(電磁的方法)を使える書き方になっているか。役員を区分所有者に限っているか、外部専門家も選べるか。専有部分のリフォームを理事長の承認制にしているか。滞納への対応(遅延損害金・法的措置)が書いてあるか。修繕積立金の使い道の範囲。これらの多くは条番号まで国のひな形と比べられます。
規約の改正案は、標準管理規約では理事会で決めてから総会に出します(第54条第1項第二号)。検討に時間がかかる場合は、理事会の下に専門委員会を置いて調査させることもできます(第55条)。ただし、標準管理規約のコメントでは、理事会に認められた経費を超える費用がかかる場合などは、専門委員会の設置に総会の決議が必要とされています。マンション管理士などの専門家に相談や助言を求めることも、規約に根拠があります(第34条)。総会では、招集通知で示した事項しか決議できないため(第47条第12項)、改正案の要領を通知に載せておきます。
相談先として、(公財)マンション管理センターが、管理規約・管理組合運営と、建物・設備の維持管理について電話相談を受けています。標準管理規約や関係法令をもとに助言する窓口で、大阪支部の番号は06-4706-7560、受付は平日の9時30分から17時です。回答は口頭だけで、個別の事案が適法かどうかの判断や法律上の意見は出さないとされています。大阪府や泉州の市町の窓口は、「マンション管理のしくみ」の「マンション管理士・相談窓口」の節にまとめています。
規約を変えたら、保管と閲覧の準備もします。区分所有法は、規約は管理者が保管し、利害関係人から請求があれば正当な理由がない限り閲覧させること、保管場所を建物内の見やすい場所に掲示することを定めています(第33条)。標準管理規約第72条は、区分所有者全員が署名した規約1通を「規約原本」とし、理事長が保管すると定めています。総会で規約を変えたときは、理事長が、現に有効な規約の内容と、それが規約原本と変更を決議した総会の議事録の内容と相違ないことを記した書面に署名して保管します。コメントでは、変更を反映した冊子を別に作る方法が望ましいとされています。全員が署名した規約がない場合は、分譲時の規約案とそれへの全員の同意書、または初めて規約を定めた総会の議事録が規約原本の役割を果たします。
- 決議要件:区分所有者の過半数で議決権の過半数を持つ人が出席し、出席者とその議決権の各4分の3以上(区分所有法第31条第1項、2026年4月1日施行)
- 特別の影響:一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼす変更はその人の承諾が必要(区分所有法第31条第1項後段、標準管理規約第47条第9項)
- 新旧対照表:国土交通省の単棟型新旧対照表とWord見え消し版を下敷きに、◎(変更必須)の条から比べる(令和7年改正の概要)
- 進め方:理事会で改正案を決議して総会へ(標準管理規約第54条第1項第二号)。専門委員会(第55条)や専門家(第34条)も使える
- 保管:規約は管理者が保管し、閲覧に応じ、保管場所を掲示(区分所有法第33条)。規約原本は理事長が保管(標準管理規約第72条)
出典:e-Gov法令検索 建物の区分所有等に関する法律(令和8年4月1日施行版)/国土交通省 マンション標準管理規約(単棟型)・同コメント(令和7年10月17日改正)/国土交通省 令和7年改正マンション標準管理規約を踏まえた管理規約の改正を行う場合の手続の留意点について/国土交通省 令和7年マンション標準管理規約改正の概要/国土交通省 マンション標準管理規約(新旧対照表・見え消し版の掲載ページ)/公益財団法人マンション管理センター 相談