民泊(住宅宿泊事業)の可否を規約で決める(第12条・総会決議・届出時の確認)
標準管理規約の第12条は、第1項で専有部分を専ら住宅として使うと定め、第2項で住宅宿泊事業の扱いを書きます。規約の本文には、住宅宿泊事業に使うことを可能とする場合と禁止する場合に応じて規定する、という注記が付いており、(ア)は「使用することができる」、(イ)は「使用してはならない」と書き分けています。どちらも対象は、住宅宿泊事業法第3条第1項の届出をして営む、同法第2条第3項の住宅宿泊事業です。コメント第12条関係②は、可能か禁止かを規約に明記することが望ましいとしています。家主居住型だけを認める例や使用細則に任せる例は「専有部分の用途と貸与」の記事で紹介したので、ここでは規約の可否が届出や総会の手続とどうつながるかを見ていきます。
同じコメントは、旅館業法の簡易宿所の許可を得て行う民泊について、旅館業の営業なので通常は第1項の住宅の用途に含まれないと考えられるとしています。旅館業法や住宅宿泊事業法に違反して行われる事業は、規約に書くまでもなく当然に禁止されている、という趣旨も添えられています。つまり、規約に書く意味があるのは、法に沿って届出をした民泊の扱いです。規約が黙っていると、区分所有者にも管理組合にも、可否を読み取る手がかりがなくなります。
届出の側から見ると、規約は行政手続の入口にあります。観光庁の「届出の際の添付書類」のページによると、区分所有建物では、専用部分の用途に関する規約の写しを添付します。規約が住宅宿泊事業を認めているなら、追加の書類は求められていません。規約に住宅宿泊事業を営むことについての定めがないときは、管理組合に禁止する意思がないことを示す書類を、次のどちらかで出します。一つは、届出の時点で住宅宿泊事業を禁止する方針が総会や理事会で決議されていないと誓約する書面(様式C)です。もう一つは、住宅宿泊事業法が成立した2017年6月以降の総会や理事会の議事録などです。
観光庁の「住宅宿泊事業者の届出に必要な情報、手続きについて」のページは、この「禁止する」の範囲も説明しています。住宅宿泊事業そのものを禁止する場合のほか、宿泊料を受けて人を宿泊させる事業など、住宅宿泊事業を含む事業を禁止する場合も、禁止する旨の定めに含まれます。一定の態様だけを認める規約は、それ以外の態様を禁止しているものと解されます。「禁止する意思がない」とは、総会や理事会で住宅宿泊事業を禁止する方針の決議がないことを指します。このように、理事会や総会で民泊を禁止する方針を決議したかどうかが、届出の判断に直接かかわります。議事録に何を残すかも、同じ意味で重くなります。
民泊を禁止したいときは、第12条第2項を禁止の形(イ)に書き換えるか、新たに置くことになります。規約の変更なので、総会の決議が必要です(第48条第一号)。決議は特別決議で、組合員総数の過半数であって議決権総数の過半数を有する組合員が出席し、出席組合員とその議決権の各4分の3以上で決めます(第47条第3項第一号)。コメント第47条関係④は、令和7年の区分所有法改正で特別多数決議が出席者による決議になり、組合員総数と議決権総数の各過半数の出席という定足数が設けられた点に留意を求めています。総会では、第43条第1項で会議の目的と議案の要領を通知した事項だけを決議できます(第47条第12項)。招集通知には、規約のどの条をどう変えるかが分かる案を載せてください。
すでに届出をして民泊を営んでいる区分所有者がいる場合は、第47条第9項に注意が要ります。規約の変更が一部の組合員の権利に特別の影響を及ぼすときは、その組合員の承諾が必要で、正当な理由がなければ拒んではならないと定めています。民泊の禁止がこの「特別の影響」に当たるかについて、標準管理規約とコメントは基準や例を示していません。国土交通省のガイドブックは、規約を変えて民泊を禁止した場合、民泊事業者は事業を廃止した日から30日以内に廃止の届出が必要で(住宅宿泊事業法第3条第6項)、管理組合として届出を促すことが大切だと説明しています。この資料にも、承諾が要るかどうかは書かれていません。当たるかどうかの判断が難しいときは、変更案を作る段階で弁護士やマンション管理士に相談するのが安全です。
規約を整えたあとの運用では、国土交通省のガイドブック(令和8年3月)が役に立ちます。規約で禁止されているのに民泊が行われている疑いがあるときは、情報を集めたうえで、保健所への通報か、専門家と相談しながらの理事長名の文書通知を考えます。通報は、一人の区分所有者ではなく管理組合として行うことが望ましいとされ、オートロックのマンションでは保健所が立ち入るのに管理組合の許可が要るため、連携が効くという説明があります。標準管理規約第67条は、規約に違反した区分所有者等に、理事長が理事会の決議を経て勧告や指示、警告を行えると定めています。民泊を認める場合は、法律で掲げることになっている標識の掲示場所を使用細則で決めておくことが望ましい、とコメント第18条関係⑤にあります。
自分のマンションの規約を確かめるときは、まず専有部分の用途の条に住宅宿泊事業の定めがあるかを見ます。定めがなければ、標準管理規約のコメントに沿って、可否を規約に書き入れるかどうかを理事会で話し合ってください。住戸を売るときに渡す管理情報の様式にも、専有部分の用途を「住宅専用(住宅宿泊事業は可)」「住宅専用(住宅宿泊事業は不可)」「住宅以外も可」から選ぶ欄があるので、規約の書き方は売買にも映ります。各マンションの規約は標準管理規約と違うことがあり、条番号や決議の要件も異なる場合があります。
- 規約の書き方:住宅宿泊事業を可能とするか禁止するかを第12条第2項に明記することが望ましい(標準管理規約第12条、コメント第12条関係②)
- 届出との関係:区分所有建物は規約の写しを添付し、規約に定めがなければ、管理組合に禁止する意思がないことを示す書類(様式Cの誓約書か議事録等)が要る(観光庁の添付書類の案内)
- 禁止する意思:総会や理事会で禁止する方針を決議していないこと。決議の有無が届出の判断に響く(観光庁の届出手続の案内)
- 禁止への変更:規約の変更は総会の特別決議(出席組合員とその議決権の各4分の3以上)。通知した議案の事項だけ決議できる(第47条第3項第一号・第12項、第48条第一号、第43条第1項)
- 特別の影響:一部の組合員の権利に特別の影響を及ぼすときはその承諾が必要で、正当な理由なく拒めない。民泊禁止が当たるかの基準は示されていない(第47条第9項)
- 禁止後の運用:事業者は廃止から30日以内に廃止届。違反の疑いは管理組合として対応し、理事長は理事会決議を経て勧告や指示ができる(住宅宿泊事業法第3条第6項、第67条第1項、国土交通省ガイドブック)
出典:国土交通省 マンション標準管理規約(単棟型)及び同コメント(令和7年10月17日改正)/観光庁 民泊制度ポータル 住宅宿泊事業者の届出に必要な情報、手続きについて/観光庁 民泊制度ポータル 届出の際の添付書類/国土交通省 管理組合・区分所有者向け 分譲マンションにおける民泊トラブル対応に関するガイドブック(令和8年3月第1版)