令和7年10月の改正のポイント
国土交通省は令和7年(2025年)10月17日にマンション標準管理規約を改正しました。2025年5月に成立したマンション関係法の改正のうち、2026年4月1日に施行された改正区分所有法の内容を反映させたものです。国土交通省の「改正の概要」は、各項目に印を付けています。「◎」は標準管理規約に合わせて変えないと区分所有法に抵触するなど、変更が必須のもの。「○」は抵触はしないが合わせることが望ましいものです。単棟型と同じ改正が団地型と複合用途型にも行われています。以下の条番号は単棟型のものです。
◎が付いた中心は、総会の定足数と決議要件です(第47条)。総会の成立に必要な出席は、議決権総数の「半数以上」から「過半数」に変わりました。規約の変更や共用部分の重大な変更などの特別決議は、組合員総数の過半数で議決権総数の過半数を持つ組合員が出席したうえで、出席組合員とその議決権の各3/4以上で決めます。改正前は組合員総数と議決権総数の各3/4以上で、欠席者が反対と同じ扱いになっていました。危険な瑕疵の除去やバリアフリー化のための共用部分の変更は、出席者の各2/3以上で決められます(第47条第4項)。建替えなどのマンション再生は組合員総数と議決権総数の各4/5以上のままですが、耐震性不足など区分所有法第62条第2項の事由に当たれば各3/4以上になります。書面や代理人で議決権を使った人は出席者に数えます。
総会の招集通知も◎の項目です(第43条)。全ての議案について「議案の要領」を示して通知します。2/3の要件で共用部分の変更を決めようとするときは、その旨と理由も通知に書きます。緊急時に招集通知の期間を縮める場合、改正前は5日間を下回らない範囲でしたが、改正後は1週間を下回らない範囲になりました。改正区分所有法第35条で、招集通知は会日の少なくとも1週間前に出すこととされ、規約では延ばすことしかできないためです。通知の出し方の詳細は総会の記事で扱います。
所在等不明区分所有者を決議から外す手続きが新しく第67条の3に置かれました(○)。区分所有法第38条の2は、区分所有者が誰か、どこにいるかが分からないとき、裁判所がほかの区分所有者だけで決議できるという裁判をする制度を設けました。標準管理規約では、理事長が理事会の決議を経て裁判所に請求します。裁判が確定すると、その人は以後の総会で議決権を持たず、組合員総数と議決権総数から除かれ、招集通知も不要になります。請求にかかった費用は、弁護士費用等を加えてその区分所有者に請求できます。同じく新設の第67条の4と第67条の5は、所有者不明専有部分管理命令と管理不全専有部分管理命令を管理組合が使うときの手続きです。
国内管理人の届出は第31条の3で新設されました(○)。区分所有法第6条の2により、国内に住所を持たない区分所有者は、国内に住む人を管理人に選び、保存行為、招集通知の受け取り、議決権の行使、管理費などの支払いを任せられます。標準管理規約では、選んだ組合員が理事長に名前と住所を届け出て、変更や終了も届け出ます。届出があれば招集通知は国内管理人あてに出します(第43条第2項)。コメントには、海外在住の組合員に国内管理人の選任を義務づける規定例も載っています。
保険金等の請求は、新設の第24条の2にまとめられました(◎)。改正区分所有法第26条第2項で、管理者は共用部分等についての保険金、損害賠償金、不当利得の返還金の請求と受け取りについて、今の区分所有者だけでなく、部屋を売った元の区分所有者も代理することが明確になりました。標準管理規約では、理事長がこれを代理し、理事会決議を経て訴訟もできます。区分所有者が個別に請求することはできず、部屋を売るときも区分所有法第26条第2項の「別段の意思表示」をしないと定めます。受け取ったお金は、原因となった瑕疵の修繕費用に充てます。修繕を終えていたり不要だったりするときは、管理費の用途や修繕積立金に回すこともできます。
そのほかの変更も並べておきます。修繕積立金は、建物や設備を新築時より良くする「改良」工事、修繕積立金の管理・運用、更新・売却・取壊しといった再生手法の合意形成に必要な調査にも使えることが明記されました(第28条)。社会情勢を受けた見直しでは、防災マニュアル、防災訓練、防災用名簿、備蓄など、管理組合が取り組む防災業務の例がコメントに加わりました(第32条コメント)。居住人数が一定規模以上のマンション向けに、理事長が防火管理者を選んで消防署に届け出る規定例も新設されています(第32条の2)。理事の職務代行者の考え方、役員の欠格条項の見直し(第36条の2)、なりすまし防止の本人確認、喫煙ルールの考え方も入りました。いずれも国のひな形なので、自分の規約にどう取り入れるかは各マンションで決めます。手順は見直しの記事で扱います。
- 定足数:議決権総数の「半数以上」から「過半数」へ(標準管理規約第47条第1項)
- 特別決議:組合員総数・議決権総数の各過半数の出席+出席者の各3/4以上。瑕疵の除去・バリアフリー化は各2/3以上(第47条第3項・第4項、区分所有法第17条・第31条)
- 招集通知:全議案に議案の要領。緊急時の短縮は5日間から1週間が下限に(第43条、区分所有法第35条)
- 所在等不明区分所有者:理事長が理事会決議を経て除外の裁判を請求(第67条の3、区分所有法第38条の2)
- 国内管理人:選任したら理事長に届出。招集通知はその人あて(第31条の3・第43条第2項、区分所有法第6条の2)
- 保険金等の請求:理事長が元の区分所有者の分も代理し、個別行使は不可(第24条の2、区分所有法第26条第2項)
出典:国土交通省 マンション標準管理規約(単棟型)・同コメント(令和7年10月17日改正)/国土交通省 令和7年マンション標準管理規約改正の概要/国土交通省 令和7年改正マンション標準管理規約を踏まえた管理規約の改正を行う場合の手続の留意点について/国土交通省 マンション標準管理規約(令和7年10月17日改正)/e-Gov法令検索 建物の区分所有等に関する法律(令和8年4月1日施行版)