泉州しらべver0.91

標準管理規約

理事長の職務と副理事長

標準管理規約(単棟型)第38条第1項は、理事長が管理組合を代表して業務を統括すると定めます。あわせて、規約、使用細則等、総会や理事会の決議で理事長の職務とされた事項を行い、理事会の承認を得て職員を採用し、または解雇します。理事長の具体的な仕事は規約のあちこちに書かれています。通常総会を新会計年度の開始から2か月以内に招集して議長を務めること(第42条)、理事会を招集すること(第52条)、収支予算案と収支決算案を総会に出すこと(第58条、第59条)、組合員名簿と居住者名簿を作って毎年1回以上確かめること(第31条の2)、防火管理者を選んで消防署に届け出ること(第32条の2)などです。コメントは、日常生活のトラブルへの対応のうち、植栽による日照障害で木を伐るかどうかのような重要な問題は、総会の決議で決めるのが望ましいとしています。標準管理規約はひな形なので、自分のマンションの規約の条番号や中身は違うことがあります。

第38条第2項は、理事長を区分所有法に定める「管理者」としています。区分所有法第26条第1項によれば、管理者は共用部分等を保存し、集会(総会)の決議を実行し、規約で定めた行為をする権利と義務を持ちます。同条第2項により、管理者はその職務について区分所有者を代理します。共用部分等の損害保険金や損害賠償金などの請求と受領では、令和7年の法改正で、すでに部屋を手放した元の区分所有者も代理できることが明確になりました(書面などで別段の意思表示をした人を除く)。標準管理規約はこれを受けて、保険金等の請求と受領を理事長に一本化しています(第24条の2、同コメント)。代理権に加えた制限は、事情を知らない第三者には主張できません(区分所有法第26条第3項)。また、法律と規約に定めのない部分では、管理者の権利義務は委任に関する規定に従います(同法第28条)。

管理者の権限は、災害時や訴訟の場面で具体的に働きます。コメントは、共用部分等の保存行為が区分所有法第26条第1項で管理者の権限とされていることを根拠に、災害等の緊急時には理事長が総会や理事会の決議を経ずに必要な保存行為を行えるとしています(第21条第6項、コメント第21条関係⑨)。訴訟については、区分所有法第26条第4項が、規約か集会の決議があれば管理者が区分所有者のために原告または被告になれると定め、そのときは遅滞なく区分所有者に通知しなければなりません(同条第5項)。標準管理規約では、規約違反の差止めなどについて、理事長が理事会の決議を経て訴訟その他の法的措置をとり、原告または被告となったときは区分所有者に通知します(第67条第3項、第6項)。所在等不明区分所有者を総会の決議から除く請求を裁判所にするときも、理事長は管理者として請求する必要があるとコメントは注意しています。

書類の保管にも管理者の立場が関わります。区分所有法は、規約は管理者が保管し、保管場所を建物内の見やすい場所に掲示すると定めています(第33条)。コメントは、総会議事録と規約原本は区分所有法で管理者が保管するものとされており、標準管理規約では理事長を管理者としているので理事長が保管する、と説明しています。管理者の選任と解任は、規約に別段の定めがない限り集会の決議で行います(区分所有法第25条第1項)。標準管理規約は、理事会の決議で理事のうちから理事長を選び(第35条第3項)、その理事長を管理者とする形をとっています。

報告の義務は二つあります。一つは総会への報告で、理事長は通常総会で組合員に前会計年度の業務の執行を報告します(第38条第3項)。区分所有法第43条も、管理者に、集会で毎年1回一定の時期に事務の報告をすることを求めています。コメントによれば、WEB会議システム等を使う総会で理事長がシステム越しに報告することもできますが、組合員からの質問には対面の場合と同じように答える必要があります。もう一つは理事会への報告で、理事長は「○か月に1回以上」職務の執行の状況を理事会に報告します(同条第4項)。間隔は各マンションが決め、コメントは3か月に1回以上を例に挙げています。理事会が理事長の仕事を確かめるための仕組みで、別添1でも、外部専門家を役員にする場合のチェック体制の一つに挙げられています。

理事長の仕事を分けたり、理事長から外したりする定めもあります。理事長は、理事会の承認を受けて、職務の一部を他の理事に委任できます(第38条第5項)。一方、管理組合と理事長の利益が相反する事項では、理事長は代表権を持たず、監事か理事長以外の理事が管理組合を代表します(同条第6項)。コメントはこの項を第37条の2(利益相反取引の防止)と同じ趣旨の規定と位置づけています。役員は管理組合の利益を犠牲にして自分や第三者の利益を図ってはならず、外部専門家を役員にできる選択肢を設けたことで、そのおそれのある取引を規制する必要が高まった、という説明です。理事会の決議に特別の利害関係を持つ理事が議決に加われないこと(第53条第3項)も、同じ趣旨で置かれています。

副理事長については第39条が定めています。副理事長は理事長を補佐し、理事長に事故があるときはその職務を代理し、理事長が欠けたときはその職務を行います。人数は「○名」と空欄で(第35条第1項)、理事長と同じく理事会の決議で理事のうちから選び、理事の過半数で役職を解けます(第35条第3項、コメント第51条関係②)。どのような場合が「事故」に当たるかについて、規約本文にもコメントにも説明はありません。日ごろの役割としては、コメントに二つの例があります。大規模なマンションで理事会の中に部会を設けるとき、理事長と副理事長(各部の部長を兼ねる形が望ましいとされます)による幹部会を設ける方法(コメント第35条関係⑥)と、預金口座の印鑑と、それを保管する金庫の鍵を、理事長と副理事長で分けて持つ方法(コメント第62条関係)です。

理事長と管理者を別の人にする運営も想定されています。コメントは、外部の専門家を活用する型として、理事会を残したまま理事長などに専門家を選ぶ型のほか、専門家を区分所有法上の管理者にして理事会が監視する型と、理事会を置かない型を示しています。後の二つでは、別添1が規約の整え方として、理事長を管理者とする定めをやめ、理事長と管理者の業務と権限を整理すること、管理者の選任と解任を総会の決議とすることなどを挙げています。また、マンション管理業者が管理者に選ばれる方式は標準管理規約の想定外とされ、留意点は国の「マンションにおける外部管理者方式に関するガイドライン」を参照するよう書かれています。自分のマンションの理事長が管理者を兼ねているかどうかは、規約の役員の章で確かめられます。

出典:国土交通省 マンション標準管理規約(単棟型)及び同コメント(令和7年10月17日改正)/e-Gov法令検索 建物の区分所有等に関する法律(令和8年4月1日施行版)

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