泉州しらべver0.91

標準管理規約

他の人の専有部分・専用使用部分への立入り(請求・拒否・緊急時と区分所有法)

第23条の見出しは「必要箇所への立入り等」で、直前の第21条(敷地及び共用部分等の管理)と第22条(窓ガラス等の改良)を受けた条文です。主語は「管理を行う者」で、管理組合とは書かれていません。第21条第1項は、敷地や共用部分等の管理を管理組合の責任と負担で行うのを原則とし、バルコニー等の保存行為のうち通常の使用に伴うものだけは専用使用権を持つ人が行うとしています。さらに、理事長の承認を受けた区分所有者が共用部分等の保存行為をする場合(第21条第3項)や、窓ガラス等の改良工事を自分の負担でする場合(第22条第2項)もあります。管理を行う立場に立つ人が複数いるので、主語が広く書かれていると読めます。立入りの対象になるのは、他の人が管理している専有部分や専用使用部分です。

第1項から第3項は、請求、拒否の制限、損害賠償の順に並んでいます。第1項は、管理を行うために必要な範囲内で、立入りと、立ち入ったうえで自分で保存行為(壊れた箇所の補修のように、今の状態を保つ行為)を実施することを請求できるとします。請求された人は、正当な理由がなければ拒否してはならず(第2項)、正当な理由なく拒否した人は、その結果生じた損害を賠償しなければなりません(第3項)。ここで与えられているのは請求できる地位です。請求に応じない人の住戸に管理を行う者が自分の判断で入ってよい、とは第1項から第3項のどこにも書かれていません。拒否されたときに自ら入れる道は、第23条では次に見る第4項の緊急時だけです。どこまでが「その結果生じた損害」に当たるかは、条文では決まらず、事案ごとの判断になります。

「正当な理由」が何を指すかは、規約にもコメントにも例が挙がっていません。長期の不在で連絡がつかない場合、日時の都合が合わない場合、請求の範囲が広すぎる場合などに拒否が許されるかどうかは、個別に判断するほかありません。条文の側で手がかりになるのは、第1項の「必要な範囲内」という限定です。入る目的、場所、作業の内容を絞って伝えられる請求であるほど、拒否に正当な理由があるかどうかを双方が判断しやすくなります。理事会は、請求の前に、どの箇所を何のために確認する必要があるのかを書き出しておくとよいでしょう。

区分所有法にも似た規定があります。第6条第2項は、区分所有者が、自分の専有部分や共用部分を保存または改良するために必要な範囲で、他の区分所有者の専有部分などを使うこと、または自らそれらを保存することを請求できると定めています。第23条と並べると違いが見えます。法の請求者は区分所有者で、目的は自分の専有部分や共用部分の保存と改良です。第23条は管理を行う者が、第21条と第22条にもとづく管理のために請求します。また、法はこの請求で他の区分所有者が損害を受けたときは償金(損害に対するつぐないの金銭)を支払うと定めていますが、第23条にはこれに当たる定めがありません。第23条第3項が賠償を負わせるのは、請求を正当な理由なく拒否した側です。標準管理規約は、第23条の根拠として区分所有法第6条第2項を挙げていません。

立ち入る側の義務は第5項にあります。立入りをした者は、速やかに、立入りをした箇所を原状に復さなければなりません。一方、第23条には、立入りや補修で住戸の設備や内装に損害が出たときの扱いと、保存行為の費用を最終的に誰が負うかが書かれていません。コメント①は、住戸内の配管から漏水して共用部分に被害が出ている場合に、漏水元の住戸に立ち入り、区分所有者に代わって漏水箇所を補修する場面を挙げていますが、費用の分け方には触れていません。この点を使用細則や運用ルールで補うかどうかは、各マンションが決めることになります。決めるときは、弁護士やマンション管理士などの専門家に確かめると確実です。

第4項は、第1項から第3項の手順を経ずに済む例外です。理事長は、災害や事故などが起き、緊急に立入りか保存行為をしなければ、共用部分等や他の専有部分に物理的または機能上の重大な影響を与えるおそれがあるときに限り、自ら立ち入り、保存行為を実施できます。委任した者に行わせることもできます。コメント②は、この緊急の立入りが認められる場合を、災害時等の共用部分の緊急工事に伴い必要な場合と、専有部分の大規模な水漏れのように放置すれば重大な影響を与えるおそれがある場合に限っています。コメント③は、第4項の実効性を高めるために各住戸の合い鍵を管理組合が預かる定めも考えられるとしつつ、プライバシーの問題があるので、各マンションの事情を踏まえて検討する必要があると述べています。

規約には、第23条のほかにも立入りの規定があります。第17条第5項は、専有部分の修繕等の工事について、理事長またはその指定を受けた者が、施行に必要な範囲で修繕等の箇所に立ち入って調査でき、区分所有者は正当な理由がなければ拒否してはならないと定めています。第21条第4項は、承認を受けて共用部分等の保存行為をする場合の手続に第17条第5項を準用し(「修繕等」を「保存行為」と読み替えます)、第22条第3項も窓ガラス等の改良工事で同じ準用をしています。管理のために入る第23条と、承認した工事を確かめるために入る第17条第5項などでは、入る目的も、入る人も違います。どちらの根拠で入るのかを、請求の書面にも書いておくと、相手に説明しやすくなります。

立入りを請求するには、まず相手に連絡がつかなければなりません。第31条の2は、理事長が組合員名簿とあわせて居住者名簿を作って保管するとしています。コメントは、居住者名簿を、設備点検等のために専有部分へ立ち入る際の連絡先を把握するためのものと位置づけ、賃借人を含む現に住んでいる人の氏名や連絡先を載せるとしています。名簿を更新する材料は届出で、区分所有者は借りた人に借用の届出を出させ(第19条第3項)、組合員は連絡先が変わったら届け出ます(第31条)。区分所有者が長期間不在にするときの届出も、連絡がつかない事態を防ぐうえで有効とされています(第31条のコメント)。理事長は毎年1回以上、名簿の内容を確認します。届出をしないために管理に支障が出るおそれがあるときは、理事長が理事会の決議を経て所在等を探索できます(第67条の2)。名簿づくりでは個人情報保護法への対応も要ります。災害時に自力で避難しにくい人の情報は要配慮個人情報に当たる場合があり、取得には原則として本人の同意が必要です(第31条の2のコメント④)。

出典:国土交通省 マンション標準管理規約(単棟型)及び同コメント(令和7年改正。第17条、第19条、第21条〜第23条、第31条、第31条の2、第67条の2関係)/e-Gov法令検索 建物の区分所有等に関する法律(令和8年4月1日施行版)

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