泉州しらべver0.91

標準管理規約

建替え・敷地売却の検討と管理組合の役割

令和7年10月改正の標準管理規約は、建物の建替え、建物の更新、建物敷地売却、建物取壊し敷地売却、取壊しの五つをまとめて「マンション再生等」と呼んでいます(第28条第1項第四号)。区分所有法では、それぞれ第62条、第64条の5、第64条の6、第64条の7、第64条の8の決議に当たります。このうち建物の更新は令和8年4月施行の改正で加わった決議で、建物の構造上主要な部分の効用を保つために共用部分の形を変え、それに伴って全ての専有部分の形や面積や位置関係も変えることを指します。コメント第28条関係⑩は、これを「一棟リノベーション」と説明しています。決議に要る賛成の割合そのものは「総会の決議要件(普通決議と特別決議)」の記事で扱っているので、ここでは検討を始めてから決議の後までの流れに絞ります。

検討を始める段階の作業は、管理組合の業務に入ります。第32条第四号は、マンション再生等に係る合意形成に必要となる事項の調査を業務に挙げています。コメント第6条関係は、管理組合の業務は区分所有法第3条の「管理」の範囲に限られるとしつつ、その「管理」は多数決による建替え決議のような団体で決める事項も広く含むと説明しています。コメント第28条関係⑤は、建替えまでの道のりのうち、修繕や改修と比べて建替えが必要かを考え構想を練る検討段階と、合意を図りながら計画を本格的に詰める計画段階で、管理組合が調査をするとしています。調べる中身は、新しい建物の設計の概要、取壊しと建築の費用の概算額とその分担、新しい建物の区分所有権の帰属などです。これは区分所有法第62条第4項が建替え決議で定めなければならないとする四つの事項と重なります。

では、決議の後の事業も管理組合が担うのかというと、標準管理規約はそういう組み立てになっていません。第28条第2項は、決議の後、マンションの再生等の円滑化に関する法律(円滑化法)によるマンション再生組合の設立認可、事業の施行認可、マンション等売却組合やマンション除却組合の設立認可を得るまでの間について、管理組合が計画や設計の経費を出せると定めています。管理組合が経費を出せる期間を、認可までと区切った書き方です。区分所有者の全員の合意で進める場合も同じように扱え、円滑化法の手続によらない任意の組織で進めるときは、その組織をいつ立ち上げるかを管理組合の中で共通の認識にしておく必要があるとされています(コメント第28条関係⑦)。再生等で管理組合が消えるときは、管理費や修繕積立金の残りを清算します。コメント第32条関係⑪は、清算の方法を規約に整えておくことが望ましいとしています。

検討の費用は、修繕積立金から出せます。第28条第1項第四号の調査は、修繕積立金を取り崩せる特別の管理の一つで、取崩しは総会の決議事項です(第48条第十号)。コメント第28条関係⑨は、この調査の経費を管理費から出すと規約に定めることもできるとしています。決議の後から認可までの計画や設計の経費のための取崩しは、別に第48条第十五号の総会決議が要ります。このとき、取壊しの場合を除いて、取り崩せるのは、事業に参加しない区分所有者に帰属する修繕積立金に当たる額を差し引いた金額までです(第28条第2項ただし書)。参加しない人の持ち分まで事業の準備に使わないための上限です。

理事会が検討を進める道具として、専門委員会があります。第55条により、理事会は専門委員会を置いて特定の課題を調べさせ、結果を報告させることができます。ただし、検討の対象が理事会の権限を超えるときや、理事会活動に認められた経費を超える費用がかかるときは、委員会の設置に総会の決議が要ります(コメント第55条関係①)。建替えの検討は専門家への委託費がかさみやすいので、設置の段階で総会に諮るかどうかを確かめておくことになります。近い将来に建替えなどを検討する可能性があるマンションでは、専有部分の大がかりな修繕の承認を求めてきた人に、その可能性を伝えることが望ましいともされています(コメント第17条関係⑨)。工事の数年後に建替えの話が出ると二重の出費になり、合意づくりの妨げにもなるからです。

再生等の決議をする総会は、ふだんより手続が重くなります。招集通知は会日の2か月前までに出し(第43条第1項)、再生等が必要な理由、しない場合に建物の効用を保つのに要る費用とその内訳、修繕の計画の内容、修繕積立金の額なども知らせます(同条第5項)。会日の1か月前までには、通知の内容を説明する説明会を開きます(同条第6項)。緊急時に招集期間を縮める扱いは、再生等の決議には使えません(同条第8項)。いずれも区分所有法第62条第6項から第8項の定めに沿ったものです。決議そのものは第48条第十四号の総会決議事項で、区分所有者と議決権の各5分の4以上(耐震性の不足など同法第62条第2項の事由があれば各4分の3以上)が要ります。ここで数える区分所有者からは、議決権を持たない人が除かれます(同法第62条第1項)。

決議の中身も法が決めています。建替え決議では、新しい建物の設計の概要、取壊しと建築の費用の概算額、費用の分担、新しい建物の区分所有権の帰属を定め、分担と帰属は区分所有者の間の衡平を損なわないように定めます(区分所有法第62条第4項・第5項)。建物更新決議もほぼ同じ四項目です(第64条の5第2項)。建物敷地売却決議では、売る相手の名前、代金の見込額、各区分所有者が受け取る金銭の算定方法を定めます(第64条の6第2項)。議事録には各区分所有者の賛否を残します(第62条第10項、第61条第6項)。コメント第47条関係⑨も、賛否が売渡し請求の相手になるかどうかに関わるため、賛成者と反対者がはっきり分かる形で決議するよう求めています。

決議に賛成しなかった人は、すぐに権利を失うわけではありません。区分所有法第63条により、集会を招集した者(ふつうは理事長)は、賛成しなかった区分所有者に、決議の内容で建替えに参加するかどうかを書面で催告します。回答の期限は催告を受けてから2か月で、回答しなければ参加しないと答えたものとみなされます。その期限が過ぎてから2か月以内に、賛成者や参加すると答えた人、またはその全員の合意で指定された買受指定者が、参加しない人に区分所有権と敷地利用権を時価で売り渡すよう請求できます。明け渡すと生活が著しく困難になり、決議の遂行に大きな影響もないと認められる人には、本人の請求で裁判所が代金の支払いなどから1年以内の範囲で明渡しを待つ期限を与えることがあります(同条第6項)。決議から2年以内に取壊しに着手しないときは、売り渡した人が買い戻しを請求できます(同条第7項)。専有部分を貸している場合は、賛成者側や貸主が借主に賃貸借の終了を請求でき、請求から6か月で終わり、貸主は補償金を払います(第64条の2)。これらは建物更新、敷地売却、取壊しの決議にも準用されます。各マンションの規約は標準管理規約どおりとは限らないので、検討の前に自分の規約の該当条を確かめてください。

出典:国土交通省 マンション標準管理規約(単棟型)及び同コメント(令和7年10月17日改正)/e-Gov法令検索 建物の区分所有等に関する法律(令和8年4月1日施行版)

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