役員の選任・資格と外部専門家
標準管理規約第35条は、管理組合に理事長、副理事長、会計担当理事、理事、監事を置くとしています。人数は「○名」と空欄で、コメントは理事の数の目安としておおむね10~15戸につき1名、最低3名程度・最高20名程度を挙げ、「○~○名」と幅で定めてもよいとしています。理事と監事は総会の決議で組合員のうちから選び、理事長・副理事長・会計担当理事は理事会の決議で理事のうちから選びます。理事長は区分所有法上の「管理者」です(第38条第2項)。区分所有法第25条は、管理者は規約に別段の定めがない限り集会(総会)の決議で選任・解任し、不正な行為などがあれば各区分所有者が裁判所に解任を請求できると定めています。
任期は第36条で「○年」とされ、再任もできます。補欠の役員の任期は前任者の残りの期間で、任期満了や辞任で退く役員は、後任が就任するまで職務を続けます。役員が部屋を売るなどして組合員でなくなると、役員の地位も失います。コメントは、任期の途中で役員が欠けたときに備え、補欠の選び方を規約で決めておくのが望ましいとしています。組合員である役員が転出や死亡で欠けたときは、理事会の決議で組合員から補欠を選べると規約に書く方法も示されています。人数を幅で決めている場合、下限を割ったら補欠を選ぶ必要があります。
役員の資格について、コメントは、居住しているかどうかに関わりなく区分所有者であることに着目して「組合員」としていると説明しています。平成23年の改正前のように「現に居住する組合員」と居住要件を加えることもできます。法人そのものは役員になれず、法人が持つ住戸では、法人から役員の任務を職務命令として受けた個人を選ぶのが一般的とされます。第36条の2は欠格条項で、破産者で復権を得ない者、拘禁刑以上の刑の執行を終わるなどしてから5年を経過しない者、暴力団員等は役員になれません。なりすまし防止のため、コメントはマイナンバーカードや運転免許証など顔写真付きの身分証明書で候補者の本人確認をする方法も挙げています。
役員のなり手が足りない場合に備え、第35条には「外部専門家を役員として選任できることとする場合」の規定例があります。第2項から「組合員のうちから」を外し、第4項で組合員以外から選ぶときの方法を細則で定めます。想定する専門家はマンション管理士、弁護士、建築士などです。細則には専門家の要件や選任の手続を書き、法人・団体から派遣を受けるなら、派遣元による報告徴収や業務監査、外部監査を選任の要件にすることが考えられるとコメントは述べます。細則で足す欠格の例として、マンション管理士の登録の取消しなどの処分を受けた者、銀行取引停止処分を受けている法人やマンション管理業者の登録を取り消された法人から派遣される者が示されています。
外部専門家を選べる形にした場合、第36条第4項も「選任(再任を除く。)の時に組合員であった役員が組合員でなくなった場合」に地位を失う、という書き方に変えます。専門家として選ばれた人が後から組合員になり、その後組合員でなくなっても、それだけで役員を外れるのは相当でないという理由です。理事会を置かずに外部の管理者が業務を行う方式など、運営の型そのものについては「マンション管理のしくみ」の「マンションの高齢化」の節で触れています。どの型を採るにしても規約の変更を伴うので、総会の特別決議が必要です。
第37条は、役員は法令、規約、使用細則等、総会と理事会の決議に従い、組合員のため誠実に職務を行うと定めます。役員は、別に定めるところにより、活動に応じた必要経費と報酬を受けられます。コメントは、外部専門家の役員には、理事会での協議の負担や業務の難しさ、専門的な寄与を考えて報酬を払うことも考えられるとし、理事会の議事録の閲覧などで業務の状況を確かめるよう勧めています。第37条の2は利益相反取引の防止です。役員が自分や第三者のために管理組合と取引するとき、管理組合と役員の利益が相反する取引をするときは、理事会で重要な事実を示して承認を受けます。理事長との利益が相反する事項では理事長は代表権を持たず、監事か他の理事が代表します(第38条第6項)。
各役員の職務は第38条から第41条にあります。理事長は管理組合を代表して業務を統括し、通常総会で前年度の業務を報告し、「○か月に1回以上」理事会に職務の状況を報告します(コメントの例は3か月に1回以上)。副理事長は理事長を補佐し、理事長に事故があれば代理します。理事は、管理組合に著しい損害を及ぼすおそれのある事実を見つけたら直ちに監事に報告し、会計担当理事は管理費等の収納・保管・運用・支出を担います。監事は業務と財産の状況を監査して総会に報告し、不正があると認めれば臨時総会を招集できます。理事会への出席と必要な意見の陳述は義務です。標準管理規約はひな形なので、自分のマンションの規約の書き方も確かめてください。
- 選び方:理事・監事は総会で組合員から、理事長・副理事長・会計担当理事は理事会で理事から選ぶ(第35条)
- 任期と補欠:任期は「○年」、補欠は前任者の残任期間、後任の就任まで職務を続ける(第36条)
- 欠格条項:破産者で復権を得ない者、拘禁刑以上の刑の執行終了等から5年未満の者、暴力団員等(第36条の2)
- 外部専門家:組合員要件を外し、選任方法を細則で定める規定例(第35条第4項・第36条第4項)
- 誠実義務・報酬・利益相反:必要経費と報酬を受けられる。利益相反取引は理事会で開示し承認(第37条・第37条の2)
- 監事:監査と総会報告、理事会への出席義務、不正時の臨時総会招集(第41条)
出典:国土交通省 マンション標準管理規約(単棟型)・同コメント(令和7年10月17日改正)/e-Gov法令検索 建物の区分所有等に関する法律(令和8年4月1日施行版)