自然と海 2026/11/01 掲載
和泉葛城山のブナ林 ― 国の天然記念物になった低山の南限林
岸和田市と貝塚市にまたがる和泉葛城山のブナ林は、1923年に国の天然記念物となりました。指定の理由、本数の変化、両市の保護の取り組みを、文化庁と両市の公式ページから整理します。
和泉葛城山のブナ林は、1923年(大正12年)3月7日に国の天然記念物に指定されました。文化庁の国指定文化財等データベースでは、所在地は貝塚市蕎原と岸和田市塔原で、指定基準は「代表的原始林、稀有の森林植物相」です。指定から2026年で100年を超える、古い指定の天然記念物です。この記事では、指定の理由、本数の変化、保護の取り組みの3点を順に見ます。
指定の理由は、ブナの分布の南限に近いことです。貝塚市の説明では、ブナは中部地方以北や日本海側に広く分布し、太平洋側では標高1,000メートルほどの山で見るのが普通です。和泉葛城山の標高は貝塚市の文化財ページで858メートルとされており、それより低い山にブナ林があることが、他地域にない条件として挙げられています。
低い山にブナが残った経緯について、岸和田市は、八大竜王社の社寺林として伐採が禁じられていたため、都市に近い場所でありながら近代まで残ったと説明しています。林は山頂北側の斜面にあります。信仰の対象になった森が、結果として伐採から守られたことになります。ただし、これは両市のページが述べる経緯であり、それ以上の古い記録までは確かめていません。
面積と本数は、貝塚市のページに数字があります。岸和田市域と合わせて約8ヘクタールが指定されており、指定当時は直径30センチメートル以上のブナが約1,800本ありました。一方で同ページは、近年はブナの大木が次々と枯れ、後継となる若木が林内にほとんど見られないため、個体数が激減していると記しています。現在の本数は、確かめた範囲の公式ページには載っていません。
貝塚市は、地球温暖化の影響も加わり、ブナ林が絶滅するおそれがあるとしています。岸和田市のページ(2009年3月更新)は、別の要因として、フィールドマナーの悪さや過剰な林道の設営により、林が徐々に損なわれつつあると述べています。枯死の原因を一つに決めた記述は両市のページにはなく、複数の要因が重なっていると読めます。
保護の動きとして、貝塚市のページは、岸和田・貝塚両市の教育委員会が学識経験者の指導を得ながら保護増殖活動を続けているとしています。貝塚市の広報記事(2002年6月掲載、2010年更新)には、地元の葛城緑の少年団が清掃登山と苗木の植栽を行い、1992年(平成4年)に始まった緑のトラスト運動で大阪府も森林を買い取って植林している、とあります。
林は動植物の場でもあります。貝塚市は、林床のユキザサやハシリドコロ、ブナ林に特有のコルリクワガタ、オニクワガタ、ニホンリスなどを挙げています。岸和田市は鳥類が年間108種見られると記し、この地に由来する植物としてカツラギグミとイズミカンアオイを挙げています。山を歩く人が増えるほど、これらを踏み荒らさない行動が問われます。
要点
- 1923年3月7日に国の天然記念物に指定(文化庁データベース)。所在地は貝塚市蕎原・岸和田市塔原
- 指定の理由は、太平洋側のブナの分布の南限に近い低山の林であること(貝塚市)
- 面積は両市域で約8ヘクタール。指定当時は直径30センチメートル以上のブナが約1,800本(貝塚市)
- 大木の枯死が進み、若木が少ない。現在の本数は確かめた公式ページに記載なし
- 両市の教育委員会が保護増殖活動を継続。1992年開始の緑のトラスト運動で大阪府も森林を買い取り植林
出典:文化庁 国指定文化財等データベース 和泉葛城山ブナ林/貝塚市 和泉葛城山ブナ林(文化財・天然記念物)/岸和田市 和泉葛城山・ブナ林(2009年3月更新)/貝塚市 和泉葛城山の説明/貝塚市広報 わがまち再発見 第12号 和泉葛城山ブナ林(2002年6月掲載)