関西空港とりんくう 2026/11/03 掲載
関西空港の航空機騒音、8市町の測定点はどう推移したか
関西国際空港の周辺では、空港会社が泉州の沿岸などで航空機の音を測っています。2024年度の年報では8市町の測定点はすべて環境基準以下で、最も高い岬町でも45デシベルでした。測定点ごとの値と12年間の移り変わり、便数との関係を見ます。
関西国際空港は、大阪湾南東部の泉州沖約5キロメートルの海上にあります。陸から離れた海の上に造ったのは騒音を避けるためで、その経緯は建設の歴史の記事にまとめました。それでも、離着陸する航空機は泉州の沿岸や陸地の上空を通ります。そこで空港を運営する関西エアポート株式会社と、新関西国際空港株式会社、関西国際空港土地保有株式会社の3社が周辺で航空機の音を測り、毎月と毎年の報告書にまとめています。報告書は騒音のほか、大気質や水質、海の生きものも扱っています。報告を集めて検討し、必要なら事業者に対策を求めるのが関西国際空港環境監視機構で、報告書は大阪府のサイトで公開されています。この記事では、2024年度の年報と2026年6月分の月報を開き、8市町にある測定点の値を読み取りました。
値を読む前に、物差しを確かめておきます。航空機騒音の環境基準は2013年4月から、時間帯補正等価騒音レベル(Lden、単位はデシベル)で評価されています。飛来する航空機の音を連続して測り、夕方と夜間の音に重みを付けて1日の平均にした値です。基準値は地域の類型で分かれ、住居系の用途地域などの類型Iは57デシベル以下、近隣商業地域や工業地域などの類型IIは62デシベル以下です。年報では、8市町の測定点のうち貝塚市二色3丁目、岬町多奈川小島、阪南市箱作、熊取町希望が丘が類型I、泉佐野市りんくう往来南、岸和田市臨海町、田尻町りんくうポート南、泉南市りんくう南浜が類型IIとされています。旧指標のWECPNLは2013年3月まで使われていました。表の「<37」は37デシベル未満を表します。
測り方は地点によって違います。年報によると、1年中測り続ける常時測定点は4地点あり、8市町では泉佐野市りんくう往来南、岬町多奈川小島、貝塚市二色3丁目の3地点です(残る1地点は泉大津市汐見町)。このほか、1回7日間の定期測定を、岸和田市臨海町、田尻町りんくうポート南、泉南市りんくう南浜、阪南市箱作では年2回(2024年度は6月と12月)、熊取町希望が丘では年1回(12月)行っています。大阪府も独自に、貝塚市澤の二色の浜公園と岬町の小島総合集会所で1週間連続の測定を続けています。こうして8市町すべてに測定点があります。ただし定期測定は1年に7日か14日分の値なので、毎日測る常時測定点の年間値と同じ重みでは比べられません。
では2024年度の値はどうだったか。常時測定点の年間平均は、岬町多奈川小島が45デシベルで最も高く、貝塚市二色3丁目が38デシベル、泉佐野市りんくう往来南が37デシベル未満でした。岬町の月ごとの値は43〜46デシベルで、どの月も基準値の57デシベルを11デシベル以上下回っています。定期測定の平均は泉南市りんくう南浜が37デシベル(6月は37未満、12月は38)、阪南市箱作は6月が37で平均は37未満、岸和田市臨海町、田尻町りんくうポート南、熊取町希望が丘はいずれも37デシベル未満でした。年報は、全ての測定局と測定地点で環境基準に適合し、環境保全目標を満たしていたと評価しています。8市町で値が最も高いのは岬町で、ほかの地点との差は7デシベル以上あります。
2013年度から2024年度までを年報の経年表で並べると、多くの地点で値が下がっています。岬町多奈川小島は49デシベルから45デシベルへ、泉佐野市りんくう往来南は42デシベルから37デシベル未満へ、貝塚市二色3丁目は40デシベルから38デシベルへ移りました。定期測定では、田尻町りんくうポート南が42デシベルから37デシベル未満へ、阪南市箱作が38デシベルから37デシベル未満へ下がっています(田尻町の地点は2022年12月から2023年6月まで嘉祥寺で測定)。泉南市りんくう南浜は37デシベル未満から42デシベルの間を上下し、2023年度の42デシベルが期間中で最も高い値です。岸和田市臨海町と熊取町希望が丘は12年間ずっと37デシベル未満で、空港の音の影響が小さい位置にあると読み取れます。
旧基準の指標WECPNL(類型Iで70以下)を使うと、開港直後からの流れも追えます。岬町多奈川小島は1994年度が62で、2024年度は56でした。泉佐野市りんくう往来南は1994年度が50で、2020年度以降は50未満です。年報は、B滑走路を使い始めた2007年度以降、常時測定の4地点はおおむね横ばいと評価しています。大阪府の1週間測定では、小島総合集会所のLdenが2014年と2015年の51デシベルから2024年は47デシベル、2025年10月15日〜21日は39デシベルでした。ただし1週間の測定は年ごとの振れが大きく、二色の浜公園は2019年の23デシベルが2020年には34デシベルでした。1年分の上下だけで傾向を決めるのは早いと考えられます。
便が増えると音はどうなるか。2024年度の乗入便数は1日平均272.4便で前年度の117%になり、国際線の旅客便数と旅客数は年度で過去最高でした。それでも常時測定点の年間値は、岬町が46から45デシベル、貝塚市が38デシベルのまま、泉佐野市は37から37デシベル未満でした。Ldenは音のエネルギーの平均なので、同じ音の回数が2倍でようやく約3デシベル上がり、2割弱の増加では1デシベルに届かない計算です。一方、年間発着回数30万回をめざす合意(2022年9月)と国の新しい飛行経路案(2023年6月)を受け、2025年3月20日から新しい環境監視体制での測定が始まりました。2026年6月分の月報でも、測った8市町の地点の平均は37デシベル以下でした。変化は今後も追う必要があります。
要点
- 航空機騒音の環境基準は2013年4月からLden(夕方と夜間に重みを付けた1日の平均)で評価し、住居系などの類型Iは57デシベル以下、商業や工業の地域などの類型IIは62デシベル以下
- 2024年度の常時測定の年間平均:岬町多奈川小島45、貝塚市二色3丁目38、泉佐野市りんくう往来南37未満(単位デシベル)。岬町の月ごとの値は43〜46で、基準値57を11以上下回る
- 2024年度の定期測定(1回7日間)の平均:泉南市りんくう南浜37、岸和田市臨海町、田尻町りんくうポート南、阪南市箱作、熊取町希望が丘は37未満。年報は全地点で環境基準に適合と評価
- 2013年度→2024年度のLden:岬町49→45、泉佐野市42→37未満、貝塚市40→38、田尻町42→37未満、阪南市38→37未満。岸和田市と熊取町は12年間ずっと37未満
- 旧指標WECPNLでは岬町多奈川小島が1994年度62→2024年度56(旧基準は類型Iで70以下)。大阪府の1週間測定では小島総合集会所が2025年10月に39デシベル、二色の浜公園が34デシベル
- 2024年度の乗入便数は1日平均272.4便(前年度比117%)でも常時測定点の値はほぼ同じ。2025年3月20日から新しい環境監視体制で測定し、2026年6月分の月報では、測った8市町の地点の平均がすべて37デシベル以下
出典:大阪府 航空機騒音について(環境基準、関西国際空港周辺の府測定結果。令和7年度)/大阪府 関西国際空港環境監視機構(月報と年報の一覧)/関西国際空港環境監視機構 環境監視結果 令和6年度報告書の概要/関西国際空港環境監視機構 令和6年度報告書 3 環境監視結果の概要及び評価(騒音等 p.29〜33)/関西国際空港環境監視機構 令和6年度報告書 1 対象事業の概要(運営状況 p.4、騒音対策 p.5〜6)/関西エアポート株式会社ほか 関西国際空港の存在・運用に係る環境監視結果報告書(2026年6月分)