泉州しらべver0.91

行政と財政 2026/11/02 掲載

8市町の公共施設の老朽化と再編を総合管理計画で比べる

泉州8市町

8市町の公共施設等総合管理計画と令和6年度財政状況資料集から、公共施設の延床面積、築30年以上の割合、有形固定資産減価償却率、更新費用の見込み、延床面積の削減目標を比べました。計画ごとに集計の時点が違うため、時点を添えて並べています。

学校、公民館、図書館、庁舎、公営住宅といった公共施設は、同じ時期に建てたものほど、改修や建て替えの時期も重なります。泉佐野市では、関西国際空港の開港に合わせた整備がそこに重なりました。総務省の試算ソフトは、建物を築30年で大規模改修し、60年で建て替えると仮定しています。国は2014年に、すべての自治体へ「公共施設等総合管理計画」をつくるよう求め、8市町もこれに応じて計画をつくり、改訂を重ねてきました。この記事では、8市町の計画の最新版に載っている建物の量、古さ、将来の更新費用、延床面積の削減目標を並べ、総務省の「財政状況資料集」にある令和6年度の有形固定資産減価償却率と合わせて比べます。泉南市は「公共施設等最適化推進基本計画」を、総合管理計画の見直しを求める国の通知を受けて令和4年2月に追記し、これを総合管理計画にあたるものとしています。計画ごとに集計した年と対象の範囲が違うため、数字には必ず計画と時点を添えます。

まず建物の量です。岸和田市は令和8年3月改定版で、建築物系の公共施設が約52万㎡(令和8年3月末)としています。泉佐野市は令和4年3月改訂版で152施設、370,343.3㎡(令和3年10月末)、貝塚市は令和6年3月改定版で262,108㎡(令和3年度末)です。泉南市は令和2年度末で170,223㎡(令和4年2月の追記)、阪南市は令和5年3月改訂版で120施設、約16.2万㎡(令和4年4月1日)です。熊取町は平成29年2月策定時の集計で約11.21万㎡(令和4年3月の改訂は第6章に施設の変更を足す形)、岬町は令和4年9月の計画で93,467.81㎡、田尻町は令和3年12月改訂版で27施設、41,666.03㎡(令和3年4月1日)です。ただし、何を数えるかは揃っていません。岸和田市の52万㎡には市民病院や競輪場が入り、旧計画の削減目標の対象は約43万㎡です。泉佐野市は医療施設、熊取町は上水道施設の建物も数えています。

人口1人当たりの延床面積は、計画に書いてある市町だけを挙げます。阪南市は3.14㎡(令和4年4月1日)で、全国平均3.83㎡より小さく、公営住宅を持たない同規模の自治体の平均2.54㎡より大きいとしています。岬町は6.16㎡(令和3年3月末)で、府内の町村平均より多く、町営住宅と集会所の多さを特徴に挙げています。田尻町は令和2年の総務省の調査をもとに4.7㎡とし、全国の8.5㎡より小さく、大阪府の全市町村平均2.8㎡、町村平均3.8㎡より大きいと示しています。6市町を同じ時点で比べられるのは、泉南市の計画にある平成27年3月末の表です。そこでは岬町5.41㎡、田尻町4.78㎡、泉佐野市3.71㎡、阪南市2.91㎡、泉南市2.68㎡、熊取町2.51㎡の順でした。岸和田市と貝塚市は、計画の本文から1人当たりの値を確かめられませんでした。

建物の古さは、築30年以上の建物の割合で見ます。延床面積に占める割合を書いている計画では、泉南市が78%(平成26年度末、約13.3万㎡)、阪南市が69%(令和5年3月改訂版)、岬町が約60%(令和4年4月)、泉佐野市が41.5%(令和3年10月末)です。阪南市は、今の施設をすべて持ち続けると10年後には81%になるとしています。田尻町は築30年以上の建物が約55%(令和3年4月)としています。泉佐野市の計画には、空港開港後の平成8年度に総合文化センター、平成9年度にりんくう総合医療センターという大きな建物を建てた経緯が書かれています。岸和田市、貝塚市、熊取町は、築30年以上の割合を計画の本文で確かめられませんでした。岸和田市の計画は、平成前半に一斉に建てた施設の多くが築30〜40年を迎えたと書いています。

建物の古さを金額から測る指標が、有形固定資産減価償却率です。建物や道路などの取得価額のうち、耐用年数に応じてどれだけ償却が進んだかを示し、100%に近いほど古い資産が多いことになります。令和6年度財政状況資料集の令和6年度の値は、岸和田市75.1%、泉南市70.2%、田尻町69.1%、熊取町68.1%、岬町67.6%、貝塚市65.6%、泉佐野市59.5%、阪南市57.4%です。比べる相手は市町ごとに決まる類似団体内の平均で、岸和田市と熊取町は64.1%、泉佐野市、貝塚市、泉南市、阪南市は66.1%、田尻町は64.0%、岬町は65.2%です。この基準を上回るのは岸和田市、泉南市、田尻町、熊取町、岬町の5市町で、岸和田市は11.0ポイント上回ります。令和2年度からの動きでは、岸和田市は71.0%から、熊取町は63.8%から毎年上がっています。阪南市の値には注意が要ります。阪南市は令和5年度の資料集の分析欄で、令和5年度の57.6%は誤りで正しくは73.9%だと書いています。

率が下がった市町は、分析欄で理由を挙げています。貝塚市は令和4年度の新庁舎の完成で類似団体よりやや低い水準まで下がったとしています。阪南市は令和6年度の分析欄で、率が類似団体より低く下がる傾向にある理由として学校給食センターの改修などの投資を挙げていますが、前年度の訂正後の73.9%からここまで下がった理由は、資料集からは確かめられませんでした。泉南市は令和6年度に71.8%から70.2%へ下がり、固定資産台帳を精緻化した影響だとしています。泉佐野市は、集約化と複合化で古い施設の除却が進んだためと考えられるとしています。新しい建物を建てても、台帳を見直しても率は下がるので、率が低いことは古い建物が少ないことと同じではありません。岸和田市は分析欄で、図書館の率が97.1%、こども園、幼稚園、保育所が81.1%と、施設の種類ごとの差も示しています。

計画は、今の建物をそのまま持ち続けたときの費用も見積もっています。以下は第2段落で挙げた各計画の最新版の試算です。年数も前提も計画ごとに違うので、順位は付けず、建物だけの数字を1件ずつ挙げます。岸和田市は今後30年の一般会計施設について、65年ごとに建て替えると1,665.8億円(年55.5億円)、80年ごとなら1,156.4億円(年38.5億円)とし、保全に充てられる財源の上限を年約32億円と見ています。泉佐野市は今後40年で、従来の方法なら1,772.9億円(年44.3億円)、長寿命化すると891.7億円(年22.3億円)で、直近5年の建物への投資的経費は年平均47.7億円です。貝塚市は2024〜2035年度の12年間で、壊れてから直す事後保全なら398億円(年33億円)、長寿命化すれば290億円(年24億円)としています。

岸和田市、泉佐野市、貝塚市以外の5市町の試算です。泉南市は今後40年で785.5億円(年19.6億円)とし、充てられる投資的経費を年15億円と置くと、年約4.6億円が足りないとしています。阪南市は公共施設だけで年平均19.1億円とし、インフラを含めると2022〜2055年の34年間で947.8億円(年27.9億円)、過去15年の投資的経費の平均17.6億円の約1.59倍になるとしています。熊取町は今後40年で約438億円(年約11億円)、岬町は今後40年で約442.6億円(年11.1億円)で、岬町は公共施設の維持管理経費などの年平均5.8億円の約2倍だとしています。田尻町は建物だけで40年に約160.9億円(年約4.0億円)とし、直近5年の建物の投資的経費の年平均約3.0億円と比べ、毎年約1.0億円が不足すると見込みます。一方、泉佐野市は長寿命化すれば建物とインフラの合計が年62.6億円となり、直近5年の投資的経費66.5億円を下回るとしており、前提の置き方で見通しは変わります。

費用と財源の差を埋めるため、各計画の最新版の多くは延床面積の削減目標を置いています。最も大きいのは泉南市の40年で40%縮減と、阪南市の令和27年度までに40%以上削減で、阪南市は令和4年の16.2万㎡を9.7万㎡にし、1人当たりを2.54㎡にする筋道を示しています。泉佐野市と熊取町は40年で25%削減で、熊取町は計画期間の20年(2036年度まで)の目標を12.5%としています。岸和田市は令和17年度までに平成28年3月末と比べて14%削減とし、岬町は令和2年度からの10年で5%削減です。目標の立て方が違う市町もあります。貝塚市は延床面積の削減率ではなく、有形固定資産減価償却率を府内類似団体の水準65.5%以下に保つことを目標とし、そのために予防保全として年約11億円が要るとしています。田尻町の計画には、延床面積の数値目標が見当たりませんでした。

延床面積の目標と実績を突き合わせられるのは岸和田市と泉南市です。岸和田市は旧計画で令和7年度までに3%、令和17年度までに30%の削減を掲げていましたが、令和7年度末の減少は約1万㎡、2.6%にとどまりました。供用を止めたのに解体していない建物が残ったためで、それらを解体済みとみなして数えると3.6%です。改定版は令和17年度の目標を14%に置き直しました(旧計画と同じ対象と起点で数えると16%)。泉南市は40%縮減の目標に対し、延床面積が平成27年度末の171,149㎡から令和2年度末の170,223㎡へと、ほぼ横ばいでした。延床面積の目標を持たない貝塚市も、計画のグラフでは2017年の268,461㎡から2021年度末の262,108㎡へ減っています。岸和田市の例からは、施設の供用を止めても解体や売却が済むまで延床面積は減らず、削減の数字が遅れて出ることが読み取れます。岸和田市の改定版は、同じ量を減らしても10年目と20年目では30年間の財政効果に大きな差が出るとして、削減の速さも試算に入れています。

要点

出典:大阪府 令和6年度 市町村財政状況資料集(8市町の公会計指標分析・財政指標組合せ分析表)/大阪府 令和5年度 市町村財政状況資料集(阪南市の分析欄の訂正)/岸和田市 公共施設等総合管理計画(令和8年3月改定版)/貝塚市 公共施設等総合管理計画(令和6年3月改定・令和7年12月一部改定)/泉佐野市 公共施設等総合管理計画(令和4年3月改訂)/泉南市 公共施設等最適化推進基本計画(平成28年3月・令和4年2月一部追記)/阪南市 公共施設等総合管理計画 改訂版(令和5年3月改訂)/熊取町 公共施設等総合管理計画(令和4年3月改訂)/田尻町 公共施設等総合管理計画(令和3年12月改訂)/岬町 公共施設等総合管理計画(令和4年9月)

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