防災 2026/10/24 掲載
南海トラフ地震と台風被害 泉州8市町の想定と備え
大阪府の南海トラフ巨大地震の想定(2013年)では、泉州8市町の最大震度は6弱〜6強、代表地点の最大津波水位はO.P.3.8〜4.9mで、1mの津波は岬町で58分、岸和田市で97分で届きます。2018年の台風21号では関空連絡橋にタンカーが衝突しました。
大阪府は2013年8月20日に津波浸水想定を、同年10月に人的被害・建物被害の想定を公表しました。国が2012年8月に示した南海トラフ巨大地震の11のモデルのうち、府域への影響が大きい4つを重ね合わせた最大クラスの想定です。府はその後、防潮堤の液状化対策が2023年度末におおむね終わったことなどを受けて見直しを進めており、2026年3月18日の部会では新しい被害想定の算定が議題になりました。2026年10月時点で、見直し後の確定版の公表は確認できていません。
府の想定による市町別の最大震度は、泉南市・阪南市・岬町が6強、岸和田市・貝塚市・泉佐野市・熊取町・田尻町が6弱です。国が2012年に示した値では泉佐野市と田尻町も6強とされ、府の値より1段階高くなっています。府の市町村別表で揺れによる建物の全壊棟数を見ると、阪南市894棟、岬町579棟、泉南市488棟が多く、岸和田市117棟、泉佐野市115棟、貝塚市109棟、熊取町68棟、田尻町23棟でした。震度6強とされた南部の3市町に揺れの被害が集まっていることが読み取れます。
府の津波浸水想定では、代表地点ごとに最大津波水位(大阪湾の基準面O.P.からの高さ)と、1mの津波が届くまでの時間が示されています。岸和田水門4.9m・97分、二色浜海水浴場(貝塚市)4.6m・90分、りんくう公園前(泉佐野市)4.0m・83分、田尻川水門4.2m・83分、岡田漁港(泉南市)3.8m・82分、尾崎港(阪南市)4.2m・77分、小島漁港(岬町)4.4m・58分です。20cmの水位変化は岸和田水門で56分、それより南の地点では26〜35分で始まります。湾の入り口に近い岬町ほど早く、湾の奥へ行くほど遅く届くことがわかります。海に面していない熊取町には代表地点がありません。
府の市町村別表で、冬の18時に地震が起き、すぐに避難する人が少ない場合の津波による死者は、岸和田市1,901人、貝塚市300人、阪南市229人、岬町187人、泉佐野市78人、田尻町44人、泉南市33人、熊取町0人です。府全体では132,967人とされました。同じ時間帯で避難が早い場合の表では、8市町の津波による死者はいずれも0人です。建物倒壊による死者(冬の深夜)は阪南市56人、岬町37人、泉南市26人、岸和田市10人などでした。津波の被害は、逃げ始める早さで大きく変わることを府の数字は示しています。
8市町はそれぞれ公式サイトにハザードマップを載せています。ページ名は、岸和田市「岸和田市総合防災マップ」(2022年1月発行)、貝塚市「ハザードマップ(津波・土砂災害・洪水・内水・高潮ハザードマップ)」、泉佐野市「泉佐野市ハザードマップ等」、泉南市「津波ハザードマップ・津波避難計画」、阪南市「総合防災マップ(令和4年3月作成)」、熊取町「熊取町総合防災マップ・避難場所情報」、田尻町「田尻町Web版ハザードマップ」、岬町「岬町総合防災マップ」です。国土地理院の「わがまちハザードマップ」からも各市町のマップをたどれます。
市町のハザードマップに書かれた津波の到達時間は、府の想定にある「1mの津波が届く時間」であることが多い、と府は説明しています。一方、気象庁が地震の直後に発表する津波到達予想時間は「潮位の変化が始まる時間」です。同じ「到達時間」という言葉でも、数えている水位が違います。府のページでは、国土地理院の「重ねるハザードマップ」で住所を入れ、「津波(想定最大規模)」を選ぶと自宅の浸水深を確かめられると案内しています。
2018年9月4日、台風21号が大阪湾付近を通過した際、荒天を避けて錨泊していた油タンカー「宝運丸」(2,591トン)が錨を引きずって流され、関西国際空港連絡橋に衝突しました。海上保安庁によると瞬間最大風速は58.1m/sで、乗組員11人は全員救助されました。関西エアポートの技術者の報告では、高波で1期島の大部分が浸水し、第1ターミナルビルの約50%で電源が失われ、全面復旧に約2週間かかりました。事故後、2019年1月31日からは大型台風の直撃が予想されるとき、関空から3マイル(約5.5km)の範囲で船の航行が原則禁止されています。
要点
- 最大震度(大阪府の想定・2013年):泉南市・阪南市・岬町が6強、ほかの5市町は6弱
- 1mの津波の到達(府の想定・2013年):岬町小島漁港58分〜岸和田水門97分。最大津波水位はO.P.3.8〜4.9m
- 津波による死者(府の想定・冬18時・早期避難が少ない場合):岸和田市1,901人が最多、熊取町0人。避難が早い場合は8市町とも0人
- 2018年9月4日:台風21号でタンカーが関空連絡橋に衝突(瞬間最大風速58.1m/s)。空港の全面復旧に約2週間
- 2019年1月31日から:大型台風の直撃が予想されるとき、関空から3マイル以内は船の航行を原則禁止
出典:大阪府 大阪府域の被害想定について(人的被害・建物被害)市町村別表(2013年10月・南海トラフ巨大地震災害対策等検討部会 参考資料)/大阪府 市区町村別の最大震度(2013年・国公表値併記)/大阪府 津波浸水想定の検討について(第3回地震津波災害対策等検討部会 資料3・2024年11月7日)/大阪府 津波浸水想定(2013年8月20日公表・2024年8月23日更新)/大阪府 地震津波災害対策等検討部会(2026年8月14日更新)/国土地理院 わがまちハザードマップ/第八管区海上保安本部 荒天時の走錨等に起因する事故の再発防止に向けて(2019年4月26日)/関西エアポート 塚野・瀬口 2018年台風21号による被災を受けた関西国際空港の越波対策について(近畿地方整備局研究発表会・2020年度)/岸和田市 ハザードマップ・防災マップ(2026年10月確認)/貝塚市 ハザードマップ・防災マップ(2026年10月確認)/泉佐野市 ハザードマップ・防災マップ(2026年10月確認)/泉南市 ハザードマップ・防災マップ(2026年10月確認)/阪南市 ハザードマップ・防災マップ(2026年10月確認)/熊取町 ハザードマップ・防災マップ(2026年10月確認)/田尻町 ハザードマップ・防災マップ(2026年10月確認)/岬町 ハザードマップ・防災マップ(2026年10月確認)